2017.04.10
横浜市が1963年から発行している、地域課題や行政の施策について、横浜市職員、市民、専門家が誌上で意見を発表し、討論・交流し、政策立案に反映することを目指す政策研究誌「調査季報」は、テキストデータを「オープンデータ」として横浜市のWEBサイトで公開しています。
LOCAL GOOD YOKOHAMA編集部では、「調査季報」のデータを引用した記事「テーマリポート」をシリーズで掲載していきます。
第1弾は、「調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会」(平成29年2月発行)を取り上げます。この号では、横浜市におけるこれまでの男女共同参画の取組みをふまえながら、横浜の歴史、地域・企業・市の専門支援機関・行政などにおける多様な取組みを紹介し、横浜市が目指す「日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市」のあるべき姿を展望しています。
シリーズ最初の投稿は、179号の特集「男女共同参画によって実現する女性活躍社会」を考えていく上で、横浜市が行政的な課題として考えている、進展する超高齢・人口減少社会における産業経済の3大課題についてのリポートです。
以下、調査季報179号「《3》超高齢・人口減少社会における新しい働き方と地域経済の担い手としての女性 」より(著者:調査季報編集部)
1 超高齢・人口減少社会が産業経済にもたらす3つの課題
「日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市の実現」。第4次男女共同参画計画に掲げられた目標である。日本一を目指す。これだけの目標を掲げるのには、それだけの理由と決意がある。その大きな理由の一つは、超高齢社会と人口減少の急速な進展である。
例えば、2010年の国勢調査を基準とする将来人口推計(平成24年度)では本市の人口は2019年をピークに減少に転ずると推計されている。また、2025年には65歳以上の高齢者人口は約100万人となる一方で、30~40代の子育て世代は約25万人減少し、そして、毎年の出生数も今より約7千人減ってしまうと推計されている。
まさに戦後から人口が減少することなく、市域が拡大し続けた横浜市にも超高齢化と人口減少の大波が押し寄せてきているのである。このように急速に進展する超高齢・人口減少社会が産業経済に与える影響や課題は以下の点に集約することができるのではないか、すなわち
・生産年齢人口の減少による労働力の不足
・人口減少による消費市場の縮小
・世帯の縮小や高齢化の進展による市民のケア負担の増大である。
生産年齢人口が急速に減少していけば、事業者間で人材の奪い合いが起こり、場合によっては人手不足が原因で事業が縮小したり、継続できなくなる。同時に消費者マーケットも縮小し続けるので、新たなサービスや製品を開発することなく、これまでと同じ仕組みや方法で、同じ品質のモノやサービスを提供するだけでは、売り上げや利益が減少し続け、場合によっては市場から撤退せざる得なくなる。一方で個々の市民の立場からすれば家族の介護や子育てなど無償のケア労働に従事する時間が増え、相対的に有償労働に割ける時間が減るため、新たな働き方を工夫しない限りは、収入が減少したり、場合によっては経済的に自立した生活を送ることが困難になる。
このように横浜市において将来にわたって超高齢・人口減少社会が進展し続ければ、既存の社会経済システムを見直し、革新しない限り、以上のような社会経済的リスクが高まり続けることは避けられないだろう。
さらに、これからの10年は、横浜のみならず、日本全国のほぼ全てのマチやムラで高齢化と人口減少が進む時代である。横浜の生産年齢人口が減るからと言って、高度経済成長期のように国内の他の地域からの若年者や子育て世代の流入を促すことは極めて困難である。そのことは、過去10年間において横浜の生産年齢人口は他の地域から流入する傾向にあるのではなく、東京都区部などへと流出する傾向にあるという事実からも伺い知れよう。
また、人口減少社会への対応策としてよく挙げられる「外国人移民」の受入については、横浜市域の外国につながる市民の人口も中区などを中心にこの10年の間に急増しており、受入に伴う社会的・経済的・財政的コストも考えた上で積極的な移民受け入れによる労働力の補充や消費市場の拡充が妥当か慎重に考える必要がある。。
すなわち、私たち横浜市は、原則として他からの「黒船」や「援軍」をあてにすることなく、現373万の市民が共に手を結び、活躍し続けることで、進展する超高齢・人口減少社会における産業経済の3大課題と思われる「労働力の不足」、「消費市場の縮小」、「ケア負担の増大」に臨まなければならないということである。
◎引用終わり
編集部より
横浜市の将来人口推計によると2019年から横浜市の人口は減少に転じるとともに、2025年には高齢者が100万人(そのうち後期高齢者60万人となり、30代、40代が現在と比べて25万人減少するという、これまでに経験したことのない超高齢化社会を迎えます。
次回リポートは、「一億総活躍社会」と「女性活躍推進法」をテーマにお届けします。
「調査季報179号 特集:男女共同参画によって実現する女性活躍社会」
日本一女性が働きやすい、働きがいのあ る都市・横浜の実現に向けて
1.女性活躍を進める各国の動向と日本の現状
2.横浜市におけるこれまでの女性の社会進出と男女共同参画の取組
3.超高齢・人口減少社会における新しい働き方と地域経済の担い手としての女性
4.女性の暮らしを支えるセーフティネット~自立支援の視点から
5.男女が共に活躍できる都市・横浜を目指して
http://www.city.yokohama.lg.jp/seisaku/seisaku/chousa/kihou/179/
調査季報は、市民生活にとって重要な課題や自治体の政策について、市職員や専門家・市民が意見を発表し、討論するための政策研究誌です。自治体が取り組む最先端の課題や都市の抱える問題を、各号ごとにテーマを設定して論ずる「特集」、主に職員が研究成果を発表する場である「調査研究レポート」、研究報告「横浜会議からの報告」などから構成されています。昭和38年(1963年)11月に創刊し、これまでに180号が発行されています。
バックナンバーは、市ホームページで全号を見られるほか、155号以降は横浜市役所1階の「市民情報センター」で購入できます。
1冊 500円 (税込)
http://www.city.yokohama.lg.jp/seisaku/seisaku/chousa/kihou/
調査季報は、横浜市ホームページに、全記事のテキストデータがオープンデータとして掲載されています。
オープンデータ化した記事のライセンスは CC BY(原著作者のクレジットを表示すること等で営利目的を含め自由に複製などの二次利用が可能)となってています。
LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp