2016.12.03
横浜市経済局消費生活協働促進事業「『地域を知る』『エシカルを知る』ソーシャルな消費者養成講座」が9月13日、「さくらWORK<関内>(横浜市中区相生町)で開催されました。「消費者市民社会」を生きる消費者の「環境に配慮した豊かで賢い消費行動」を促す内容となっています。
この事業を横浜市と協働して行うのはNPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」(中区)とNPO法人「森ノオト」(青葉区)2団体。横浜コミュニティデザイン・ラボは「フェアトレード・地産地消・循環型社会」についてフィールドワークを通じて学ぶ内容を、森ノオトは「横浜産の調味料で地産地消と食の安全を学ぶ」企画を実施しています。
●「消費者市民社会」は一人一人の思いから
消費者庁によると「消費者市民社会」とは、
消費者一人一人が、自分だけでなく周りの人々や、将来生まれる人々の状況、内外の社会経済情勢や地球環境にまで思いを馳せて生活し、社会の発展と改善に積極的に参加する社会
http://www.caa.go.jp/adjustments/hakusyo/2013/honbun_13_column.html
としています。
「『地域を知る』『エシカルを知る』ソーシャルな消費者養成講座」は全5回。今回の第1回目のテーマは『よこはま家庭ごみ事情~わたしたちのごみから「消費」を考える』。具体的には食品ロスの現状を知り、地域でどのような取り組みが展開されているのかを学ぶ内容となっています。
今回は横浜市の生ゴミ処理に深く関係する企業、横浜市のリサイクルの第一線にいる市職員、長年資源リサイクルに事業者として取り組み、今は若い人たちへの環境問題啓発を行っている団体代表の3人が登壇し、それぞれの現場の取り組みと考察を報告しました。
●「分別からリサイクルがはじまる」
「現場企業の取り組み」として登壇したのは、横浜環境保全株式会社(中区吉田町)代表取締役の高橋義和さん。横浜市は家庭から排出される廃棄物については市が処理し、その他の飲食店等からの廃棄物(=事業系廃棄物)は横浜市の許可を受けた事業者が収集・処理にあたっています。同社は、1972年に横浜市一般廃棄物収集運搬処分業許可「第1号」を取得し、長年事業系の廃棄物処理に携わってきました。現在は、処理に止まらず、スーパーマーケット、レストラン、コンビニエンスから出される事業用一般廃棄物(生ゴミ)を原料として、肥料や固形燃料の製造に積極的に取り組んでいます。
同社の横浜第1工場(横浜市金沢区鳥浜)は2005年から有機肥料を作っています。生ゴミに副資材として剪定枝やコーヒカスを加え、発酵させたのが「ハマのありが堆肥」。成分分析は3カ月に1度行い、品質・安全性について神奈川県の認定も受けています。月に200〜250袋が売れているとのことでした。
東急グルメフロント(東京都目黒区)が展開するそば店から出る食べ残しも、この肥料づくりに活用されています。同社では、店の薬味として出すネギの栽培にこのたい肥を使っており「食品リサイクルループ」というプロジェクトになっています。
また、固形燃料を製造する施設も第1工場内にあります。コンビニエンスストアのお弁当やパンを原料として、ビニールなどの容器包装は新たな包装材となり、生ゴミはビニール系のハイプラスチックを加え、高カロリーの固形燃料にリサイクルされます。
高橋さんは「分別からリサイクルが始まる」ということを強調します。油分の多い生ゴミは機械を汚し、肥料の品質低下を招きます。農業生産者が安心して使用できる肥料を作るためには、徹底した分別が必要とのことでした。
●1人あたりの食品ロスは1年で「おにぎり230個分の重さ」
〜横浜市3R政策と市民ができることについて〜
現在の横浜における食品ロスの現状とその対策について説明してくれたのは、横浜市資源循環局 総務部3R推進課長・河村義秀さんです。3Rとはリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)のこと。
河村さんは家庭廃棄物(生ごみ等)を回収、処理などを行う資源循環行政の第一線で、毎日、横浜の暮らしと向き合っています。
食品ロスに相当する「手つかず食品」は、具体的に推定の数字が挙げられていました。食品ロスの内、手つかず食品を言われているものは1年間で2万トン、横浜市民1人に換算すると「おにぎり230個」の重さ、金額にすると約17,000円とのこと。
河村さんは「4人世帯では一体いくらになるでしょう?」と河村さん。もちろん金額だけではなく、食べ物がこれだけ無為に消えている社会構造や生活スタイルに疑問を投げかけます。
その対策として横浜市は、冷蔵庫内の食品の整理・確認を促す「イーオ・ミーオの日」を設けて啓発活動を展開しています。これは毎月10日と30日を、横浜市資源局のマスコットキャラクター「イーオとミーオ」になぞらえています。
河村さんは「小さなことでも373万人の市民が少しずつ取り組むことで、大きな減量につながる」と、教育現場やイベントなどで地道に啓発に取り組んでいくそうです。
●今、全世界が日本レベルの生活をしたとすると、必要な資源は地球2.9個分です。
3人目の登壇者は、中高校生を対象に環境問題啓発を行っている一般社団法人「かんきょうデザインプロジェクト」(横浜市中区)代表の武松昭男さん。
「かんきょうデザインプロジェクト」は、中高校生を対象にライフスタイルの中にエコロジカルな考え方を持ってほしいという思いから、2010年に「かんきょう組写フォトコンテスト」を開始し、2012年からは産業廃棄物処分場視察やリサイクルツアー、セミナーを実施してきました。新たに2016年度は、地産地消フィールドワークや古着活用ファッションショーなど6つのプログラムからなる「かんきょう文化祭」を実施しました。
「環境を考えることは次の人のことを考える」という理念を持って活動してきた武松さんからは、一歩先に進んでいる海外の政策が紹介されました。2015年5月にフランスでは「売れ残り食品の廃棄を禁止する法律」が国民議会全会一致で可決されました。
具体的には ①面積400㎡以上の店舗に対する慈善事業への寄付の義務付け ②違反には75,000ユーロの罰金 ③品質に問題のあるものは肥料、という内容です。従来、売れ残り食品が転売・寄付されないように行われていた「廃棄物に漂白剤をかける」という処理も禁止されました。
また、デンマークでは、賞味期限切れや規格外商品、消費期限が近い商品のみを扱うスーパーが出現し人気を集めているという報告もありました。
武松さんは、日本は食料自給率の低さ、輸入時の運送に使用される莫大なエネルギー量に触れ「世界全体が日本同様の消費活動をすれば、地球2.9個分の資源が必要です。今、私たちは『作りすぎない』『作りすぎない』『買いすぎない』『外食の時のオーダーは頼みすぎない』」という4つのアクションが大切です」と武松さんは提案していました。
【ローカルグッドレポーターから】
本レベルの生活では地球が2.9個必要、言い換えれば、1個の地球では、地球人口の約2/3の削減が必要という認識も成り立ちます。異なるセクターの3人の講演から感じたことは、「今ある食品の有効利用」「食品リサイクルが広く行われる環境醸成」という意識を持ちながら、ささやかでも市民ひとり一人の具体的な活動が必要だということです。(荒井優紀子)
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