2014.06.11
「慶応義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ」(藤沢市)は5月、3次元プリンターなど新しいデジタル工作機器を備えた実験的な市民工房「ファブラボ」に代表される、新たなものづくりのあり方を企業とともに実践的に研究する出張拠点(横浜市中区山下町223)を横浜に開設した。
横浜の企業を中心に、大学・公益団体・NPO法人などが協働する仕組み「ファブ・シティー・コンソーシアム」発足を呼びかける設立準備会が5月22日に行われ、横浜市や日産自動車、岡村製作所などから約40人が参加した。6月5日には、関心ある企業やNPOなどが集まって第1回ミーティングを実施する。
新たなものづくりに関心を持つ企業・団体などと共同研究を進めていくために設けられた研究拠点は、横浜スタジアムそばのオフィスビル2階にある約300平方メートルのスペース。大型レーザーカッター、CNCミリングマシン(家具用・プロダクト用)、3Dプリンター、デジタル刺繍ミシンなどが設置されている。
同ラボの代表は、2013年8月に横浜市で行われた「世界ファブラボ代表者会議」(FAB9)で実行委員長を務めた、慶応義塾大学環境情報学部准教授の田中浩也さん。FAB9終了後、田中さんは「ひとりで作る」パーソナルファブリケーションだけでなく、集まって作る「ソーシャルファブリケーション」、さらに「まち」のなかで、多様な人たちが対話を重ねながらパブリックなものを作り上げていく「ファブ・シティー」という考え方を提示しながら、横浜での拠点整備を探ってきた。新しいものづくりの世界的ネットワーク「ファブラボ」の日本における発起人で、経済産業省の「新ものづくり研究会」や、総務省の「ファブ社会の展望に関する検討会」の委員も務めた。
発足する「ファブ・シティー・コンソーシアム」は、大学(教員・学生)、企業、自治体、NPO、市民が協働で「まちのアイテム」「まちのシステム」「まちのサービス」を実験的にプロトタイピングする工房として構想されている。NPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」(中区相生町3)が、シェアオフィス「さくらWORKS<関内>」に昨年8月に設置した、国内6番目のファブラボである「ファブラボ関内」とも連携し、「ファブ・シティ-」を横浜から発信する。
設立準備会の冒頭で、横浜市文化観光局局長の中山こずゑさんは「横浜市はまちづくりの核に、創造都市という考え方を大きな柱にしている。新しいテクノロジーが未来を開いていく動きをサポートし、企業、NPO、行政が壁を取り払い、一緒にオープンマインドな都市をつくっていきたい」とあいさつした。
同ラボでは、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスから田中さんをはじめ、環境情報学部の筧康明さん(学際情報学)、加藤文俊さん(フィールド観察)、水野大二郎さん(ファッションデザイン)、東京都市大学から岡部大介さん(教育学)の5人の教員がプロジェクトにかかわる。今年度は、「モビリティとファブ」をテーマにプロジェクトを進めていく予定。
田中さんは「バルセロナ、アムステルダムなど世界の創造都市とともに切磋琢磨しながら、環境を意識し、モノのライフサイクルを考えたデザインを横浜の市民や企業のみなさんとともに実践する『Do Tank』『Make Tank』として、ファブ・シティー・コンソーシアムを育てていきたい」と抱負を語るとともに「スマート・ファンキー・クリエーティブをモットーにしながら、まずは2020年の東京五輪を目標に、デジタルとフィジカルが交じり合う新しい領域のプロジェクトをデザインしていきたい」と話している。
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