ローカルグッドニュース

「地域とつながるアイデアソンの作り方~ファシリテーション入門~」第2回開催 レポート

アイデアソンの様子と矢吹博和さん

3月8日に、横浜市開港記念会館で「地域とつながるアイデアソンの作り方~ファシリテーション入門~」第2回講座が横浜市開港記念会館( 横浜市中区本町)にて開催されました。  

 この講座はNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボが横浜市立大学と協働し、”事業開発へのつながり””地域の人との対話からアイデアのきっかけを掴み取ること”など、地域が企業とつながることで双方向にいい影響を与えることができる活動を始めるための、取っ掛かりの機会をつくっていく事を目的にしています。

講師を務めたのは、第1回講座に引き続いて矢吹博和さん(以下矢吹さん)です。

矢吹博和さん

矢吹博和さん

 テーマに対してチームごとにアイデアを出し合いまとめる”アイデアソン”で20代〜30代の働きざかり世代を地域に巻き込むための方法を実践的なワークショップで学びました。

 アイデアソン講座第2回では、「ファシリテーション未経験者であっても、簡単に実践できるアイデア出し課題解決のやり方を学ぶ」として、フューチャーランゲージと呼ばれる「未来思考で課題解決を行う手法」を学ぶ内容でした。第1回講座が、個人で黙々と作業を行う時間だったこととは対照的に、グループでわいわいと意見を出し合う講座内容となっていました。

多数の人が集まりました

多数の人が集まりました

 まずは自己紹介の時間として、所属・名前・専門性・意気込みを話しました。そして、アイスブレイクとして、2人ペアで共通点を出来るだけ多く書き出し、テーブル内で、一番共通点が多いペアが優勝するという形式で、6人グループ内の交流を促す手法を学びました。

アイスブレイクを行いました

アイスブレイクを行いました

 この様な手法を行う時に、話すときのルールとしてクッシュボールと呼ばれるボールを話す人が持つことを説明していました。

 今回のアイデアソンのテーマは、「2020年新市庁舎移転の活用法」です。現在の横浜市庁舎からの移転が行われる中で、現市庁舎の敷地や周辺地区の魅力を高めるアイデアを考えます。

2020年新市庁舎移転の活用法

2020年新市庁舎移転の活用法

 今回のテーマは、課題を明確にしたうえで何かアイデアが欲しい、という状態です。第1回講座のブレインライティングではアイデアを多く出す形式でした。今回は現状を見て、課題を整理して、問題点を探すことを行い、対話型のアイデアソンを行います。

 地域でファシリテーターを行う中では、対話に慣れていない市民もいる為、対話(ダイアログ)とディスカッションの違いを説明しました。

 

ダイアログ

目的:意見や体験を分かち合い、枠組みを外し、発見、共有化すること

役割:お互いが尊重され、平等の立場にあること

背景:問題が複雑で答えが見えない、繰り返し問題が発生する、思考が固着して抜け出せないなどのとき

プロセス:時間をとって、各自の仮説を表面化し、判断を保留し、探求するために質問をし続ける

ディスカッション

目的:意見の正否・妥当性を競い、正否の判断を示し、1つの最適な解への同意を得る。

役割:知識・経験・権限のある者の発言が重んじられる

背景:選択肢が明白で、評価しても最高のものを選ぶ必要があるとき

プロセス:なるべく短時間で仮説を立証するために、主張、説得し、妥協点を見つける

 矢吹さんいわく、対話とは「こういう考え方あるよね」と対話するものであり、「ただ、市民の人と対話しましょう」というものだそうです。答えがなく、利害関係がある問題に対してロジカルにデータを出したりしようと思うと、うまくいかないため、対話で落としどころを見つけるとのことです。

 次に、対話を行う上でのグランドルールとして、下記のものがあるとのことです。

・テーマについて対話しよう
・積極的な発言を心がける
・他のメンバーの話に耳を傾ける
・対話することを意識する
・全員参加を心がける
・人格を否定しない
・結論を無理にまとめる必要はない

 

フューチャーランゲージ

 この様に対話とダイアログの違いを踏まえたうえで、フューチャーランゲージを行いました。 フューチャーランゲージとは、慶應義塾大学の井庭先生が研究しているパターンランゲージというものが元になっています。その内容は建築業界で、「この様なプランでまちづくりをやると良くなります」という知見です。 体験と未来、前後をセットにして、言語化します。暗黙知を言語化することがパターンランゲージであり、フューチャーランゲージはその派生形であるとのことです。新しい未来を考えるときに、無いものを定義する、未来を作ってしまうというものです。

 模造紙の上半分に未来、下半分には現状を書き、その悩みの解決策を考えることを行いました。

 様々な問題やキーワードの中から、現実はどこにつながるか、この現状があればこの未来になるのではないか、を考えます。

フューチャーランゲージ

フューチャーランゲージ

 参加者の活発な対話や発想を促す進行役1~2名と参加メンバー3~5名の、5~6名のグループに分かれ、ワークショップを行いました。参加者は付箋を持ち、色ごとに付箋に様々なキーワードを記入します。黄色は理想の未来イメージ、青色であれば現状の悩みや課題、緑色であれば、悩みや問題を解決する手法やキーワード、赤色はフューチャーワードです。そして、下記の順番に従って、アイデアを考えます。各手法は5分から10分で行いました。

1、理想の未来イメージについてのブレインストーミング

「2020年市役所移転後の旧市庁舎の活用」の未来イメージを考えます。

2、現状の「悩み・課題」についてのブレインストーミング

市役所移転後の旧市庁舎跡の利用に関する課題や悩みを考えます。

 この中では、講座を主催したNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの宮島真紀子さんより、「市役所職員がいなくなることにより、飲食店がダメージを受ける」「商店街の家主の高齢化」「ホームレスが多い」「中々新しいことが出来ない」「アーティストが多い」などの特徴や現状があることを話しました。

現状の「悩み・課題」を説明していました。

現状の「悩み・課題」を説明していました。

3、「問題・悩み」の要素のゆるやかなグルーピングとして、書いた内容を元にグループごとにまとめていきます。

4、「未来イメージ」についてのゆるやかなグルーピングとして、書いた内容を元にグループごとにまとめていきます。

 

5、「問題・悩み」と、それが解決すると思われる「未来イメージ」の連結

 この中で現状や課題がどこにつながるか、連結して考えることが行われました。

 

6、どのように「問題・悩み」が解決され、「未来イメージ」を実現できるかの「手段・方法」の提案

 現状から未来にどの様なものがあるかを、考えました。この中では突飛なものでもよい為、どんな方法・アイデアでも出すこと、手段や方法やアイデア、現実的なアイデアも突飛なアイデアも提案してよい、とのことでした。

 

7、重要な「手段・方法」に新しい造語を作る名付け

 ここでは、フューチャーワードという今までにない単語を出すことを行います。単語の組み合わせで新しいものを作り、ワンワードでものを説明できるような、新しいフレーズや名詞、キャッチコピーを考えます。
 矢吹さんは「未来を実現する為には、未来やパスがあり、それをワードで呼びます」「フューチャーワードの前後を洗い出し、現状があって、未来があってこそ、フューチャーワードがあります。」と話していました。ブレインストーミングの中では、他のチームを覗きに行くことも可能です。

他のグループの内容を見て情報交換を行いました

他のグループの内容を見て情報交換を行いました

 その後は振り返りとして、学んだこと・気付いたこと・やってみたいことを、グループ内で共有する時間を設けていました。

 矢吹さんは、アイデアソンの中で出たグループの意見を取り上げながら、「様々なやり方がある中で、前回と今回、2種類のやり方を紹介しました。『アイデアを考えましょう』と言うとハードになりますが、『何かをどうやって実現しましょうか?』という時にストーリーを絞ることが出来ます。」と話し、講座を締めくくりました。

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講師 矢吹 博和氏プロフィール

NPO法人 アイデア創発コミュニティ推進機構 代表理事/

株式会社ラーニングプロセス代表/株式会社HackCamp 取締役副社長 Chief Ideathon Officer (CiO)/

イノベーションファシリテーター/ワークショップデザイナー

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