ローカルグッドニュース

フィールドワークで出会った洋光台団地の物語

「団地の暮らし展」での映像上映

慶應義塾大学環境情報学部加藤文俊研究室の2・3年生と大学院生が、洋光台団地(横浜市磯子区)をフィールドワークした成果を発表する「団地の暮らし展」が1月24日、同団地内の「コミュニティチャレンジラボ」(CCラボ、横浜市磯子区洋光台3)で始まりました。26日まで。

1970年から入居が始まった洋光台団地は、中央・南・北・西の計約5600戸で構成されています。今回のフィールドワークは、加藤さんの同僚で慶大総合政策学部教授の大江守之さんが、同団地の未来を考える都市再生機構(UR)のプロジェクト「ルネッサンス in 洋光台」の「エリア会議」メンバーだったことがきっかけで実現しました。

個人の暮らし、町の風景を丹念に観察し、関わる人とコミュニケーションを深めていく「フィールドワーク」は、「置き換えられない個性」を発見・理解する手法です。加藤研究室では、その観察成果を分析し、よりよい「場づくり」を志向しています。

今回は、2014年10月から12月の「秋学期」をすべて団地のフィールドワークに充てました。2・3年生14人、大学院生3人の計5チームが「3カ月後には鍋を囲む」ことを目標に、人探しから始めたそうです。

成果として出てきたのは「井戸端会議」「食卓を囲むまで」「中華王」「南の三間」の4つのレポートと、大学院生チームがつくった映像「故郷」。レポートについては、サマリーと写真でつくるパネルをCCラボ内に展示し、映像についてはiPadによる随時再生と、スクリーンによる共同視聴の時間も設けました。

「井戸端会議」は、広場の片隅でかわされるおばあちゃんたちのおしゃべりの時間についてのレポート。移動販売の車を囲んで、毎週2回交わされるおばあちゃんたちの会話の時間の豊かさ、互いを思いやる関係の深さへの学生の驚きが綴られています。

「食卓を囲むまで」は、夫婦2人暮らしの30代女性が、自分らしい工夫を凝らして丁寧に暮らしをつむいでいることを描きました。「中華王」は、30代で洋光台駅前に店をオープンした中国人男性の1日に密着取材し、オンとオフの「間にある時間」にみせた無防備な表情を切り取っています。「南の三間」は、同団地内で家族の変化とともに3回も引越をした60代男性にとっての「洋光台団地」を、ライフスタイルの変遷と重ね合わせて描き出しました。

加藤文俊教授(左端)ゼミは、5回にわたって、このCCラボで授業を行った。

加藤文俊教授(左端)ゼミは、5回にわたって、このCCラボで授業を行った。

映像作品としてフィールドワークの成果をまとめた大学院生チームが関わったのは、同団地の商店街「サンモール洋光台」内にあるネパール料理店のオーナー。30代、夫婦と子ども1人で、ネパールの習慣を守りつつも、日本人とも少しずつ心を通わせている現況を切り取って「移り住む人々にとってのふるさと・洋光台」を表現しています。

「井戸端会議」を報告した枡野友香さんは「団地に住んだこともなく、風景だけ見るとちょっと冷たい場所かなと最初思っていましたが、かかわってみるとコミュニケーションが濃く、あいさつも行き交うコミュニティでした。リノベーションも進んでいて、室内がきれいになっていることも驚きました」と話しています。

学生たちに「団地フィールドワーク」を投げかけた加藤さんは「徹底して固有名詞にこだわって、人やことを見つめることで、データやアンケート解析ではわからない”ものがたり”が浮かび上がります。魅力的な場づくりは、空間を整備するだけでは成り立たず、人々のコミュニケーションが必要。洋光台で見たり聞いたりしたことを、ルネッサンスを目指す洋光台にお返しする報告会としたい」と話しています。

映像の上映時間など、「団地の暮らし展」の詳細はウェブサイトで。なお、25日15時からは、洋光台中央団地広場で、加藤教授が「課外活動」として続けているプロジェクト「カレーキャラバン」によるカレーパーティーも開かれる予定です。

ライター紹介

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