2019.05.26
弘明寺リビングラボ
5月25日(土)横浜総合高校(横浜市南区大岡2)を会場に「弘明寺リビングラボ」のキックオフイベントが開催されました。
「弘明寺リビングラボ」の中心となって活動をけん引するのは、「レーベンスフロイデ合同会社」代表の新井孝一さん。製薬関係会社や市大付属病院に勤務した経験も活かし、今後整備が進みゆく地域医療連携ネットワークをより効果的に活かすために、それらを補完するサービスの構築を地域住民主体で目指すものです。
今回、医療や福祉関係者などを筆頭に、地域ケアプラザや地区センターなど様々な地域の担い手の方々が、このテーマに関心を寄せて参加されました。
まず最初に、三部制定時制高校であり3~4割の生徒が何らかの生きづらさや困難を抱える横浜総合高校の小市校長から、学生のみなさんの学びの概要や、彼らの自己肯定感を向上させ、社会参加に備える経験を積む為にも力を入れているという、地域連携の事例の紹介がありました。印象的だったのは、形式化された商業施設ではなく、顔の見える心のこもった関係性を感じられる商店街だからこそ感じる体験が重要という指摘でした。
さて、弘明寺リビングラボでは、今後社会に実装が進む地域医療ネットワークがしっかり地域に根ざすものとなるよう、住民やサービスの利用者に対して必要性やメリットを認識して貰い、この地域医療ネットワークの理解と利用促進を促すことをひとつの目的としています。
神奈川県健康医療局の掲げる計画では、地域医療ネットワークは市内7地域、県内15地域での展開が方針として決定している模様で、鶴見区での「サルビアネット」は実証実験に入っているそうです。
地域医療ネットワークの構築に関して、実はだいぶ前から動きとしては沢山あり、国としても予算をとって進めてきたが、トップダウン型では利用者や医療関係者の理解を上手く得られず根付かないことが多かったようです。そんな中、軌道に乗せて行くためには、医療サービスを受ける側の視点でそれぞれが関心を持って学び合い理解を進めるネットワークが、大切になってくるのではという事でした。
また、介護事業を営む(株)ジェイアーク代表取締役の青木さんから、介護分野における課題解決に関する研究協定を横浜市と民間企業4社とで締結した「ケアテック・オープン・ラボ横浜」の紹介があり、介護現場で負担になっている事務作業の多さ、そしてその解決にAIやIoTの活用が期待されていること、そしてイノベーション人材の育成において福祉分野以外からも関心のある層を呼び込む重要性が語られました。
NPO法人 ヘルスケアクラウド研究会理事の笠原さんからは、コペンハーゲンにおける北欧型リビングラボの特徴を紹介していただきました。北欧ならではのデザインにおける文化やマインドがあり、それは専門家だけで様々なでなくユーザー自身を信頼し、多様な属性の方々が緩やかに繋がりながら進めるデザイン思考です。
また、デザインする上で五感を使った体験を大切にする多感覚統合インタラクションを大切にしていて、その趣向は北欧に限らず参考になるものでした。
地域課題をマクロな視点で客観的データとして読み解き、テクノロジーを活用してその解決や効率化等を進めてゆくことは、各リビングラボにも共通する流れです。
弘明寺リビングラボは、独居世帯数の多さも特徴的な弘明寺において地域のまだまだ元気な高齢者中心となり、「健康」「食」「住」というテーマで、自らが課題解決の担い手ともなりながら多様な主体と共にいきいきと健康管理のサポートに取り組み、地域医療連携システムを補完するサービスを作り上げて行こうというものです。
1300年の歴史をもつ地域の象徴でもある弘明寺を中心とした地域の中で、各リビングラボ共通の課題でもある「持続可能な体制となる経済の流れ」を事業としてどのように見出してゆくのか、今後の活動が期待されます。
一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィスは、横浜市内で展開されているリビングラボ活動を支援する団体です。「サーキュラーエコノミーPlus」を団体理念に掲げ、市民が主体となった産学民連携による循環型のまちづくりを推進しています。