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【SDGs-SWY連携企画】SDGsに本気で取り組む!-「いのち輝く神奈川」の実現に向けて-

SDGsに本気で取り組む!~「いのち輝く神奈川」の実現に向けて~

 山口 健太郎さん(神奈川県いのち・SDGs担当理事)

まず、今年2月に開催された神奈川県のSDGsに関するキックオフ・イベントである「SDGsフォーラム」(※注1)の時点から、短期間で神奈川県が様々な取組を進めておられることに驚きを覚えます。このように行政として積極的にSDGs達成に向けて取り組んでおられる中で、私たちミレニアル世代にどのようなことを期待していますか?

山口さん:今年2月に開催した「SDGsフォーラム」では、神奈川県の政策の根幹である「未病」を中心としたテーマでお話をしました。しかしながら、我々は未病だけでなく、SDGsの特徴を活かし、多様なステークホルダーの参加のもと、多種多様な課題を解決していこうと考えております。当然、ミレニアル世代の皆さんも社会の重要なステークホルダーですから、一緒に頑張っていきたいと思っています。私にとってはミレニアル世代の皆さんがSDGsについての活動はもちろんのこと、社会の様々なことに対して問題意識を持っていること自体が嬉しいことです。

現代社会では価値観が非常に多様化しており、県としては「県の政策に関わるから、SDGs-SWYのような市民社会の取組を応援する」のではなく、SDGsという国連が定めた包括的な目標の達成に向けて必要な活動であると整理し、市民社会の多様な活動を積極的に支援しています。SDGsは非常に幅広い分野が関係し合う目標ですので、福祉に関する活動も「もう少し環境に配慮した活動につなげられないか」とか「環境団体と何かコラボレーションができないか」といった視点から活動を捉えることができます。また、もし同じ地域で福祉団体と環境団体が活動していれば、一緒にタッグを組みながら活動することで、より効果的な活動を行えるのではないか、より多くの人を活動に巻き込めるのではないか、というように、地域の課題に対して、SDGsを軸としながら、総体として捉えるように心がけていきたいと考えています。

こうした背景があり、定年後のシニア世代の活動も非常に重要ですが、若い世代が地域の将来を考えることにより、従来の凝り固まった発想ではなく、新しいツールを使った柔軟な発想から生まれるダイナミックな動きが実現できるのではないかと期待しています。SNSを含め、多くの先端的ツールを使いこなす若い世代が主導して取り組んで行くことが、SDGs達成の鍵になると思います。民間企業も、これからのマーケットで主流となる若い世代が、どこに価値観を置いているのか注視しています。県としてもSDGs達成に向けた若者や様々なステークホルダーの活動を発信することで企業活動に影響を与え、ESG投資の機運を高めるなど、社会を良い方向に進めていきたいと考えています。このように、若い世代を積極的に支援していきたいと考えていますし、逆に我々がどのような支援をすれば、若い世代が活動しやすくなるのか理解したいと常々考えています。そうした活動に、民間企業を巻き込みながら取り組むなど、県が多様なステークホルダーの間にはいることで、円滑にパートナーシップが構築され、スピード感を持って課題に立ち向かえるであれば、県としても非常に嬉しく思います。


(※注1)SDGsフォーラム:かながわ地球環境保全推進会議が主催し、2018年2月1日(木)に神奈川県庁で開催されたシンポジウム。黒岩知事の挨拶、川廷昌弘氏(株式会社博報堂DYホールディングス)による基調講演の後、神奈川県を代表する企業である鈴廣かまぼこや、イオン株式会社によるSDGs達成に向けた取組などが発表された、神奈川県のSDGsに関する取組のキックオフ・イベントである。開催結果、及び詳細は神奈川県ウェブサイト(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/ap4/cnt/f160477/p1202574.html)。

 

県が率先してリスクを取っていく

   

SDGs達成に向けて、広域自治体である都道府県だからこそ担うことのできる役割を感じていますか?

山口さん:広域自治体としては、思い切った先駆的な取組に挑戦しやすいという特徴があります。市町村に日常的な業務や財政的に余裕がない中、大きな政策の枠組みの中で、様々な挑戦をすることができるのは県の強みです。そして、神奈川県内33市町村の地域ごとのニーズを汲み取り、企業との間に入ってSDGs達成に向けた取組をマッチングする役割を担うことができます。また、何か検討課題があるときに、個別の市町村が全て調査研究を行うのではなく、県が市町村のニーズに基づいた調査研究を行い、各市町村に幅広い情報共有をして、市町村の動きをバックアップすることが広域行政の役割です。国は省庁ごとに縦割りですが、県では様々な動きをミックスして横断的に再構成して市町村に提供するという役割があります。例えば、神奈川県が取り組んでいるSDGsの文脈で考えると、社会的インパクト評価のような先駆的なモデルを作ったり、民間企業と市町村のマッチングをしたりという取組が考えられます。そして、リスクを取って一歩踏み込んだ取組を進めて行きたいと考えています。

SDGsは流行りではない。腰を据えて取り組んで行く

ウェブサイト上に公開されている庁内検討用の資料(※注2)で“神奈川県はSDGs本気で取り組む”という言葉があり、覚悟を感じました。

山口さん:まさにSDGs達成に向けた取組をやらねばならないという気持ちの表れです。神奈川県が置かれている状況は大変厳しいと自覚しています。というのも、神奈川県は横浜・川崎のような都市部もあれば、人口減少や過疎化の問題が進んでいる消滅可能都市と呼ばれる地域も抱えています。こうした特徴は、まるで日本の縮図のようだと感じています。そこで、神奈川県をフィールドにして、都市問題の解決だけでなく、過疎化への対策を講じて解決することができれば、他県の都市部、あるいは過疎地域でも応用ができるのではないかと考えています。そのために神奈川県がこれまで取組んできた政策をバージョンアップさせる上で、SDGsを活用していこうとしています。「SDGsは自治体にとって流行だから取り組もう」と考えているのではなく、腰を据えて取り組んで行くんだという意気込みを「神奈川県はSDGsに本気で取り組む」という言葉に込めています。今は政策に関わる部署だけでなく観光や環境など、幅広い範囲の役職者を中心にプロジェクト・チームのような形で議論しながら、蟹江憲史さん(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)や、神奈川県の非常勤顧問である川廷昌弘さん(株式会社博報堂DYホールディングス)のアドバイスを受けてSDGs達成を目指して取組んでいます。具体的には、これまで日本社会は行政が社会課題を解決する公助に頼る部分が多かったと思いますが、ひとりひとりが自分自身を助ける自助、地域やコミュニティで助け合う共助(互助)といった住民参加型の取組が必要になると考えています。核家族化の進展など社会構造が変化する中で、地域でのつながりが希薄になっていると言われていますが、昭和30年代にあったような地域での繋がり、絆のようなものをSDGs 達成に向けて取り組む中で取り戻していけたらと考えています。


(※注2)神奈川県資料:横須賀市ウェブサイト中に公開(https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0810/documents/10th_kanagawa.pdf)。

 

SDGsに関連して、学校やミレニアル世代の若者を対象とした施策は展開していますか?

山口さん:現在のところはまだ具体的な取組は開始されていませんが、教育機関でSDGsを意識できるような授業を展開していきたいと考えています。例えば、県は広域行政を担う行政機関として、公立の高校を所管していますので、高校の授業の中で「持続可能な開発に向けた教育(ESD)」に関連する授業を展開することや、神奈川県は大学が多く所在しているので、協定の中で神奈川県の職員を派遣してSDGsに関連したプログラムを実施していきたいと考えています。SDGs-SWYの皆さんの活動もそうですが、学生をはじめとした若者がSDGs達成に向けて考えたアイディアを、具体的な行動に結びつけてもらえるよう世の中に発信することが県の役割ですし、アイディアが具体的なアクションになれば、我々にとって嬉しいことでもあります。

歴史を振り返ってみると、行動経済成長期に経済は著しく発展しましたが、引き換えに資源の枯渇などの課題も発生しています。我々の世代はミレニアル世代の皆さんに負の遺産のようなものを残してしまっているように思いますが、次の世代に少しでも良い世界を引き継げるように取り組んで行きます。例えば、子どもの相対的貧困や国内での飢餓といったの顕在化しづらい課題についても、子ども食堂のような取組を持続可能な仕組みにできるよう支援するなど、地域課題に取組む市民社会の方々を応援できる環境を作り出せるように、企業や関係機関と協力して取り組んで行きたいと考えています。

 

最後の質問ですが、県が行政機関として実際にSDGsを活用していく中で、山口さんはどのようなところにSDGsの強みがあると感じますか?

山口さん:国連が推進しているSDGsは、世界共通の目標であるということが強みだと思います。一方で、グローバルな目標であるSDGsをどのように地域(ローカル)に落とし込んで行くのかという点は課題と言えます。そこで、地域の文脈にSDGsを落とし込んでいくことが県のような行政機関の果たす役割であり、重要の仕事であると考えています。しかしながら、地域にSDGsを浸透させ、課題解決に立ち向かうことは行政だけではできない挑戦ですので、市民社会や民間企業と連携して、それぞれが役割を果たしながらSDGsの達成に向けて取組んでいきたいと考えています。ぜひ学生の皆さんともコラボレーションしながら、神奈川県をフィールドに課題解決に向けた取組を実証できるよう取組んでいきたいと考えています。そして、行政、企業、市民社会、そして若者も一体となり、神奈川県の総力を結集してSDGs達成に向けて取組んでいきます。

 

山口健太郎(Kentaro Yamaguchi)

神奈川県理事(いのち・SDGs担当)

1983年神奈川県庁入庁。米国ロサンジェルス駐在員、新産業振興課課長代理、交通環境課長、太陽光発電推進課長、国際戦略総合特区推進課長等を経て2016年ヘルスケア・ニューフロンティア推進統括官、2018年4月より現職。

参考:神奈川県ウェブサイト(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/r5k/sdgs/2030.html

 


SDGs-SWY インタビュー記事「❝SDGsに本気で取り組む!-『いのち輝く神奈川』の実現に向けて-❞ 山口 健太郎さん(神奈川県いのち・SDGs担当理事)」(2018年9月25日)

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「SDGs-SWYについて」

SDGs-SWY は、内閣府青年国際交流事業のひとつ、「世界青年の船」事業の既参加青年が中心となり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、草の根で活動する世界中のミレニアル世代が集う場づくりを目指して、2016年2月に設立されました。

〇 活動内容

1980年以降に生まれたミレニアル世代を主な対象として、次の3点を念頭に置きながら、SDGsの達成に取り組む方々へのインタビュー記事の公開、各地域でのアイディアソンワークショップの開催といった草の根でのSDGs達成を支援する活動に取り組んでいます。

1.SDGsの達成に向けた、草の根の取り組みを支援すること

2.国際機関でのキャリア形成を目指す人たちの高め合う場をつくること

3.政府や国際機関をはじめとした社会の意思決定権者にミレニアル世代の声を届け、政策に反映するよう働きかけること

〇 私たちのミッション

SDGs-SWY のミッションは、世界中でSDGs の達成に向けて取り組むミレニアル世代の活動を後押しすることです。生き生きと楽しんで、自分たちの目指す未来と重ね合わせながら、行動に移していく人が集う場をつくっていきます。

〇 私たちの組織

SDGs-SWYは、事務局メンバーだけでなく、活動をともにつくっていく仲間とともに構成されるプラットフォーム(集いの場)です。達成したい目標や、取り組みたい活動ごとにチームがつくられ、それぞれが各国、各地域で活動し、経験を持ち寄りながら課題解決を図ります。

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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