ローカルグッドニュース

性的マイノリティの高校生らが同世代にメッセージ

翠嵐高校の生徒たちと同じ10代のかっちゃんは、堂々と率直に自分の気持ちを語った。
高校生を前に、性の多様性について語る星野慎二さん。

高校生を前に、性の多様性について語る星野慎二さん。

同性愛や性同一障害など「性的マイノリティ(少数者)」の人々の相談・交流事業を行い、多様な生き方を尊重する社会づくりを目指すNPO法人「SHIP」(横浜市神奈川区台町7)のメンバーらが7月14日、神奈川県立翠嵐高校定時制(横浜市神奈川区、渡辺英司校長)の生徒約200人を前に「性の多様性」をテーマに講演しました。性的マイノリティとして生きる同世代の言葉に、生徒たちは耳を傾けていました。

同高校では、年に1度、校外から専門家を招いた講演会を実施しています。性教育分野では、これまでHIV(ヒト免疫不全ウイルス)など、性感染症をテーマに選ぶことが多かったのですが、今年初めて「性的マイノリティ」について学ぶことになりました。

文部科学省が国公私立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校を対象に実施した「学校における性同一性障害に係る対応に関する状況調査」(2013年4-12月実施、2014年6月発表)によると、全国で606人が「自分の身体的な性別と心の性の不一致に悩んでいる」との報告がありました。性同一性障害とは「心の性」と「体の性」が一致しない状態がつづき、心の性に身体・社会的な性を適合させようという意思を持っている人のうち、医師に診断済みの人のことを指しています。

「SHIP」は、2002年に前身の任意団体が活動を始め、2012年4月にNPO法人化しました。コミュニティスペースを運営しながら、差別や偏見のために自分らしさを隠してしまいがちな「性的マイノリティ」の自己肯定感をはぐくみ、仲間づくりを支援する一方、行政や教育関係、企業などに差別や偏見をなくし、多様な生き方を認め合えるような啓発活動を続けています。

講演ではまず、代表の星野慎二さんが「同性愛」「性同一性障害」などの「定義」を示しながら、人間の性には、自分がどうありたいかという「心の性」、生物学的な「体の性」があることを説明しました。さらに、自分の意思や他人の意見などで変えることができない「恋愛対象」が加わって「100人いれば、100通りの性がある」と「多様性」について強調しました。

その後、専門学校生(28歳)、県内の定時制高校4年生(18歳)、全日制高校2年生(17歳)が「当事者」として登壇し、それぞれの経験について話をしました。このうち、18歳の高校生「「かっちゃん」は、小学生時代に「男性として男性が恋愛対象だ」という自分に気づき、受け入れ、カミングアウトした経緯を淡々と語りました。「女にモテないやつは男にもモテない」という持論があるかっちゃんは、在籍する定時制高校の文化祭で、性的マイノリティについてのイベントを提案し、実現する計画についても触れました。

翠嵐高校の生徒たちと同じ10代のかっちゃんは、堂々と率直に自分の気持ちを語った。

翠嵐高校の生徒たちと同じ10代のかっちゃんは、堂々と率直に自分の気持ちを語った。

戸籍上・身体的には女性で、性同一性障害の「男性」は、専門学校入学時に相談し、同級生にカミングアウトしたものの、女性用更衣室を1年間使わなくてはならなかったエピソードなどを話しつつ「女性から男性に変化しつつある自分の現実」について、話をしました。

さらに、この日一番若い登壇者となった高校2年生の男性は「男性が好きということに中学生の時に気づき、『誰が好き?』という友達の輪に入れなかった」という切ないエピソードを語ってくれました。

当事者の話を受けて、代表の星野さんは「色々な性があっていいということだけ、覚えていてください。当事者の人には、あなたはおかしくもなんでもない。自信もって生きていってほしいと伝えたい。また、周りの人たちは友達がカミングアウトした時には、その勇気をねぎらってあげてほしい」と、翠嵐高校の生徒たちに向けてメッセージを伝えました。

「SHIP」では、コミュニティスペース「SHIPにじいろキャビン」を神奈川区内で運営しているほか、自助グループ支援、電話相談なども行っています。現在、同団体では「にじいろキャビン」の運営を支援する寄付を受け付けています。問い合わせは045-306-6769(水・金・土16時 ~ 21時、日曜 14時~18時)か、電子メール「ship@y-cru.com」まで。

ライター紹介

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