2017.07.22
「若者の政治離れが進んでいる」-。日本中でそんな声が聞こえる中、横浜市は初の「18歳選挙」である2016年の第24回参議院議員選挙で、政令指定都市としてトップの10代投票率、56.56%を上げました。7月30日に投開票される「横浜市市長選挙」で投票率向上を目指し、啓発キャンペーン真っ最中の横浜市選挙管理委員会事務局選挙部の橋本幹雄さん・平井大輔さん・桜井周平さんに、投票率向上に向けた取り組みや今後の課題についてうかがいました。(ライター=横浜市立大学1年・岩﨑真夕)
これまでの取り組みの中でも約30年前から続いているのは、中学3年生用の社会科副教材「あと3年」(以前までは20歳だったので「あと5年」)の発行です。選挙について早くから考えるきっかけづくりに役立ってきました。
また、啓発用に選挙用品の貸し出しも行っており、小学校のデザート給食の投票や生徒会選挙などにも本物の投票機材を用いることで、選挙を身近に感じてもらう取り組みも行ってきたそうです。 子供たちは、投票用紙計数機が瞬時に枚数を計測するのを見て、「すごい!」と目を輝かせるなど、興味津々な様子だとか。
また、学校での出前授業も行っており、「子供たちの反応が直に分かるのがいい」(橋本さん)ようです。例えば、2016年の参議院選挙直前、6月に出前授業が行われた横浜市立戸塚高等学校定時制では、出前授業で興味を持った生徒たちが、自主的に戸塚区役所で小さい子どもたちに選挙に関するイベントを開いた事例もあったように、着実に生徒たちの心に響いているようです。
「7月30日の横浜市長選に向けての一番の課題は、投票率の向上」と橋本さんは語ります。2013年8月に行われた前回の市長選の投票率は全体で29.5%。初めて3割を切り、過去最低となりました。また20代ではさらに低く、15.41%でした。
2016年の参議院選挙では、10代投票率が政令市トップとなったものの、市長選挙で若者がどのような投票行動をとるのか、選管も読み切れません。 若者の投票率の課題としては、投票率の高い地域と低い地域の差も問題となっています。参院選で10代の投票率が高かったのは青葉区(62.94%)を始めとする北部4区(港北区59.87%、都筑区59.87%、緑区57.97%)でした。一方、投票率の低かった鶴見区(51.18%)、瀬谷区(51.24%)との差は10ポイント以上も差がありました。
また、18歳選挙権で横浜市の有権者が約7万人増えた一方で、無効投票が増えるという問題もありました。「若い有権者が増えたことが原因だとは言い切れない」ということですが、無効票数は42,193票で、前回参院選と比べて5000票増加しています。橋本さんは「ハートマークや星マークを書いているものもありました。本人はいいと思っているのかもしれませんが、せっかくの投票が無効となってしまいます…」と苦笑い。
投票率は、天気など外的な影響にも大きく左右されるだけに対策も難しいそうですが、期日前投票の呼びかけなど、各種制度の周知に努めることで、投票率向上を図っていく方針です。
今後は横浜市内の投票所の数を増やし、投票に行きやすい環境を整備していくとのことです。現時点でも、横浜市内の投票所の数は約630あり、10分以内で行ける距離にあるとのことです。
若者対策として、2016年7月の参議院選挙では、港北区の慶應義塾大学日吉キャンパスに期日前投票所を設置しました。実際に投票に来た18・19歳の有権者数は少なかったものの、国内外のメディアでも取り上げられ、周知効果があったようです。
また、今回の横浜市長選挙では横浜市立大学にも7月24日・25日に期日前投票所を設置するなど、若者が期日前投票できる場所を広げています。
さらに、啓発キャラバン隊に大学生を起用し、市内各地で同世代の若者による呼びかけも実施しています。そのうちの1人である神奈川大学3年生の井坂朋也さんは「今、横浜にどんな問題があるのかなと思い、自然と政治に関心を持つようになってこの啓発キャラバンに応募しました。ぜひみんなに選挙に行ってほしい」と、熱心に町ゆく人たちに投票を呼びかけていました。
このほか、横浜市選管ではソーシャルメディアなどでも若い世代の投票を促すなど、さまざまな手段で投票率向上を図っています。
「若者には、何事にも積極的に挑戦してほしいですね。投票もそうですし、それ以外のことにもチャレンジしてください。」(橋本さん) 「まずは1回投票に行ってみて、選挙を体験してみてください」(平井さん)。
(1)「特効薬はない」。横浜市の高い10代投票率の裏には何か特別な方法があるのではないかと踏んでいた私にとって、この言葉は衝撃的でした。しかし、今回の取材を通して、学校と連携した主権者教育や地道な広報活動などを継続してきたことが、高い投票率につながっているということがわかりました。すぐに結果の出るものではないからこそ、特効薬はない。けれども、着実に活動を続けてきたことは、横浜市民の心に届いていると思います。
(2)今回、横浜市選挙管理委員会の皆さんに取材をお願いした動機は、筆者の出身地の高知県では、2016年7月の参院選の10代投票率は30.39%、全国最下位だったことです。そこで、同選挙で政令市トップの10代投票率を上げた横浜市の高投票率の秘訣を探ろうと、取材を依頼した次第です。
しかし、今回の取材を通して、学校と連携した主権者教育や地道な広報活動などを継続してきたことが、高い投票率につながっているということがわかりました。すぐに結果の出るものではないからこそ「特効薬はない」という言葉の重さを感じました。 最後に、取材にご協力くださった横浜市選挙管理委員会事務局の皆様、ありがとうございました。
☆7月30日(日)の横浜市市長選挙では、あなたの大切な一票をぜひ投票しましょう!
横浜市立大学1年生。高知県出身。在学中に英語、フランス語、アラビア語と社会学を学 びたいと考えている。趣味は弓道とジャグリングで、特技は傘回し。将来の夢は、世界を舞台にジャーナリストとして活動し、言葉の力で世界の諸問題の解決に貢献すること。新参者の視点から、ハマっ子も知らない横浜の魅力を発信したい。