ローカルグッドプレイヤー

地域に根ざした「横浜岩井の胡麻油」ブランドを再設定

安政4年(1857年)に創業して以来150年以上にわたり、化学的製法や添加物を一切使用せず、胡麻油を造り続けている岩井の胡麻油(神奈川区橋本町)。食の安心安全だけでなく、食文化の向上に貢献することを基本理念に掲げ、横浜のブランドとして地産地消の活動にも積極的に参加しています。今回は、地域貢献について代表取締役社長の岩井徹太郎さんにお話しを伺いました。

-横浜で長く会社を営まれていますが、地域貢献やCSRについて考えるきっかけはありましたか

企業の社会貢献の一番大事な部分は、しっかり経営をして利益を上げ、税金を納めてその税金が地域に使われることだと言われています。ですので、まずはしっかりと健全な企業運営をしていくことが最大の地域貢献だろうと思うのです。そのために、経営理念や倫理憲章、環境方針などをツールとして定めて、いかに徹底してやっていくかだと思っています。

(右)岩井の胡麻油代表取締役社長の岩井徹太郎さんと、取締役総務部長の西井明さん

当社は2005年に現在の場所に新工場を建設し本社機能を移転しました。これを契機に、企業の体制と企業イメージの再構築に着手しました。その一環として、経営理念を新しくし、倫理憲章を作りました。環境の取り組みについては、2012年にエコアクション21という環境省ガイドラインの認定を取得し、3つの基本的なベースになる経営理念、倫理憲章、環境方針がはっきりしました。

ちょうどそこ頃、横浜型地域貢献企業の認定が始まりましたので、認定制度のチェック項目に照らし合わせて一つ一つきちんとやっていこうということで、2009年に認定を受けました。

-CSRの考え方について、社員の方々への浸透はどうでしょうか

経営理念や倫理憲章は社内や工場内の見えるところに掲示しています。しかしながら、社長が思っていることを共有するのはなかなか難しいものです。長く勤めているものが多いですので、じゃあ今日からこうしますと言ってもなかなか変われません。「門前の小僧習わぬ経を読む」ではありませんが、自然とでてくるように身につけていく必要があります。

当社では、毎朝工場の前の清掃をしているのですが、これは、旧工場の時から工場前の清掃をしていた社員がいたのです。その社員は、現在は定年退職したのですが、自然と他の社員が引き継ぎ毎朝清掃を行っています。自然とそうなるというのが重要だと思います。その他、毎月月初めの1日を「クリーン大作戦」と銘打って、工場周りの清掃をしています。これはもう会社のカレンダーに毎月予定として組み込まれています。

社員1人1人がCSRとはなんぞやということを意識して、自然と動けるようにするのが一番大事だと思っています。最上位認定をもらうだけで終わったらCSRもまったく絵に描いた餅になってしまいます。認定制度を、社員のモラル、動機付けの一つにして、社員1人1人にいかにやってもらうかが重要です。

-認定制度などで、外から認められる効果は大きいですか

そこは大きいですね。5年くらい前に地域経済活性化の一環で横浜商工会議所の北部支部で「よこはま・かながわ宿ブランド」という取り組みを始めました。当社も認定ブランドとして、毎月第4土曜日に反町駅前ふれ合い広場で開催される販売会に参加しています。そういった地元の催しに参加したり、いろいろな局面で取材をうけたりすることが、企業イメージにつながっていきます。

関内の横浜ビールさんが運営する「驛の食卓」のメニューには、生産者が写真付きで紹介されていて「三陸わかめの胡麻油炒め」などメニューも生産者が分かるように載っていたりします。また、横浜の料理人や生産者があつまる「濱の料理人」にも参加しています。横浜ロイヤルパークホテルの20周年記念で地産地消メニューの晩餐会が実施された時には、ディナーの席で当社の胡麻油を使っていることを紹介してくれました。そのような、いわいる地産地消で地域に貢献できることは非常に大きなことだと思っています。

-食の安全について知りたいという希望が消費者にあると思うのですが、何か取組みをされていますか

CSR3-2当社は、工場見学を積極的に受け入れています。これは、食の安心安全をいかに伝えるか、差別化された品質をどう理解していただくかということにとても役立っています。この工場では、大手メーカーさんのガラス張りの見学とはちがって、触れば火傷してしまうような臨場感で現場を見学していただくことができます。見学の後半には、鶏ガラスープに胡麻油を少しかけて試食をしてもらうのですが、風味香味が違うことをすぐにご理解いただけます。苦労も大変さもわかるし、品質を納得いただくことができます。

この地域には小学校が3校あるのですが、3年生の社会科の授業に工場見学が組み込まれています。子ども達は素直なので、美味しいとか「すごい、すごい、こうやって作るんだ」と感激してくれます。地域の小学生にこういうふうな企業があって、こういうものづくりをしている、ということを知ってもらえばと思っています。

あるとき、工場見学にきた子どものお母さんがデパートの催事で、岩井の胡麻油を買ってくださいました。そうしたら子どもが「お母さんずるいよ、買うんだったら僕も行きたかった」と。そして翌日もう一回一緒に来てくださいました。こういうことが小さいのですがCSRの原点かなと思っています。

-地産地消など地元での取り組みを始められたのはいつ頃からですか

当社は業務用とアメリカを中心とした海外輸出向けが中心でしたが、もう一度しっかりと横浜に根を張って一般の家庭用販売もやっていこうと考え、工場移転のころからいろいろと取組んできました。家庭用の販売を始めたことで、新しい料理人の方にも知ってもらう機会も増えました。

家庭用のパッケージデザインは大正時代のものです。よく見ていただくと、岩の字の口の上に一があります。これを書いた人が「一口めしあがれ」という意味を込めて書いたと言われています。赤と緑と白、そして金色のバランスなど真似できないものなので、当社の看板として大事にしようと、変えずに使用することにしました。当社のパッケージには「YOKOHAMA JAPAN」と書かれています。これからも「横浜岩井の胡麻油」として、ブランドイメージをしっかりやっていこうと思っています。

 

<企業プロフィール>

岩井の胡麻油株式会社
代表取締役社長 岩井徹太郎
本社所在地 〒221-0053 横浜市神奈川区橋本町2-1-26
業種  植物油脂及び副産物の製造ならびに加工(食用ごま油、油粕、健康補助食品)
ウェブサイトURL  http://www.iwainogomaabura.co.jp/

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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