ローカルグッドプレイヤー

ついでに、無理なく「達成感」のある活動を

石井造園(神奈川県横浜市栄区笠間4-11-5)は昭和40年創業。公共施設の環境整備や造園をはじめ、マンションの外構や個人邸の庭作り、メンテナンスなどを手がけています。横浜型地域貢献企業には2008年に認定されました。伐採材を再利用した薪の販売や独自の緑化基金など本業を生かしながらもアイディアにあふれたCSRを続けています。横浜が大好きで、夢幸わう地域の発展の中にこそ企業の繁栄があるのだと信じ「ついでに、無理なく、達成感」の有る活動を合言葉に、地域貢献に軸足をおいたCSRを意識しているという代表取締役の石井直樹さんにお話をお聞きしました。

CSRの第一歩

CSRとの出会いはなんだったのでしょうか

2006年12月に横浜市のCSRについての調査を受けたのがきっかけに、私が「やるぞ」といって宣言し、そのときから始まったのです。社長の一言で始められるというのは小さい企業ならではのことだと思います。27歳から40歳までの横浜青年会議所(JC)の活動で「明るい豊かなまちづくり」「企業は地域の繁栄のなかにある」と叩き込まれましたので、地域のことを考え、それを商売で実践していくことが、社会的責任を果たしていくことにつながっていくことだと思っています。

地域貢献への最初の一歩はどう始まったのでしょうか

栄区役所に観葉植物のリースをやっているなかで始めた取り組みです。リースを終えて引き上げてきた植物を運んでいるとき、養護学校の車が通りました。処分する植物ではありますが「ご入用ならつかいますか?」と声をかけてみたのです。すると「全部もらっていきます」と、学校に引き取られていきました。ああ、こういうところでもう一回役にたつのだと思うとうれしかったですね。それ以来、区役所から引き取ってきた植物をついでに養護学校にお届けするという活動をしたのが最初でした。

活動にあたり心がけていることはありますか

「ついでに・無理なく・達成感のある活動」です。本業の「ついで」だから、わざわざやらない。「無理なく」だから経費をかけない。さらに「やったぜ」という「達成感がある」活動をどんどんやろうというものです。「人に喜ばれること」はみんなやりたい、社長もやりたければ社員もみんなやりたいと思います。でも、勤務時間や予算が限られる中、大きな時間やお金をかけることは出来ません。だから小さい地域活動をたくさんやるために、無理しないというのを掲げています。無理がないから継続できるのです。

社長も社員もアイデアマン

やりがいを感じたエピソードはありますか

CSR2-2薪ストーブや暖炉の愛好家から、薪が手に入りにくいと聞きました。うちはお客さんから処分してと言われる樹木がたくさんあるので、それを約40センチに切り、車一台分で500円と破格の値段で販売することにしました。さらに、横浜市の自然観察の森(横浜市栄区上郷町1562)で間伐をやりたいがボランティアの高齢化も進み人手がないと言う話を聞きました。そこで「一日間伐の手伝いしたら薪を持ってかえっていい」というバーベキューイベントはどうかなと考えました。木を切ってみたい人と森が荒れてこまっている公園を結びつける。このように、私は、地域の様々な要望・資源を結びつけることばかり考えています。「あそこの造園おもしろいぞ」「こんなこと紹介してくれた」ということになれば、どんどん注目されると思います。関わりの中で「うちの屋敷の庭をやってもらえますか」とお願いされるようになりました。地域貢献企業だと多少高くても頼んでくれるようになるのです。石井造園のファンが増えていきます。

石井造園では、社員発案のCSR活動もあると伺いました

緑化基金のはじまりは社員発案でした。請求のときに慣習で切り捨てる端数を切り捨てず取引先からもらっておいて積み立てる取り組みです。123456円の請求の場合でいう456円の部分が端数です。ある社員に「この456円は払っても払わなくてもいい、もらってももらわなくてもいい456円という存在です。双方どっちでもいいと思っている端数のお金は、社会のために使いましょう」と言われてハッとしました。取引の中ででる1円〜999円の下三桁の端数を、一年間積み、これに石井造園から同額を積みます。年間13万4000円くらいになりました。これを緑化基金としました。6年前くらいから取り組んでいて、緑化事業をしている団体に対し寄付を行っています。

-優秀な社員がいるのですね

こんな仕組みを考える社員がいるんだから社長もうかうかしていられません!「かわいそうな456円を社会のために使おう」と考えるなんて驚きですよね。

発信し続けることが大切

ーCSR導入について障壁となったことはありますか

まったくありません。

-周りへの周知はどうしていますか

CSR報告会を毎年開催しています。6年前CSR報告会がまだ珍しかったころからの取り組みです。ほかのCSR企業の協力で飲食し、音楽会なども開催します。そういった機会で、感謝して発信していくというのをやっています。

発信に力を入れているんですね

取材をどんどん受けるようにしています。「造園」と検索サイトで調べると上位にあがるんですよ。情報発信しただけの効果があると考えています。発信し続けることが大事だと思っています。取材も途切れません。「イケてる石井造園」になると、次何をやるかを誰もが注目します。結果、面白いことをすることをみんながまねをします。トレンドを作ることになりますね。

アイデアマンとしての次なる挑戦

次に考えていることはありますか

今後実践したいのは介護に対する社員の休暇です。例えば、1週に1日介護のための休暇を設ける制度です。すでに週休2日休んでいる社員がもう1日休むことに、企業として耐えられるのか。これはトップランナーとしての大きな挑戦です。
仕組みとしては、有休という権利を資源と考え、会社共通の「有休バンク」にそれぞれの社員が預けることが出来る、使いたいときに引き出し、ほかの有休の必要性の低い社員の分の有休を借りることも出来る、などのアイディアです。「親の面倒を見るえらい社員には会社としてちゃんと応援する」と伝えたいのです。制度を使うことで、士気が高まり、有休の取得率が100%に近づきます。
まだ構想の段階ですが、社員の満足度をあげるというのはそういうことを実践することだと思います。

CSRと経営は「会社の両輪」

 -経営者としてCSR活動についてどう思っていますか

CSRと経営は会社にとって両輪だと思っています。それも左右輪ではなく前後の車輪だと考えています。「経営」はエンジンから直結する駆動輪、力強く回るんです。それに牽引されるのがCSR。エンジンは力強く回って利益を生み出す。その回った分だけ同じように回るのがCSRの車輪。同じ分だけ走るんだと思っています。

<企業プロフィール>

石井造園株式会社
代表取締役 石井直樹さん
住所 神奈川県横浜市栄区笠間4-11-5
業種 造園・土木・石・しゅんせつ・とび土工・ほ装・水道施設工事業
URL http://www.ishii-zouen.co.jp/

 

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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