2018.01.09
※この記事は、NPO法人アクションポート横浜が実施している「NPOインターンシップ」に参加した大学生が取材と執筆を担当しています。
この事業は、社会課題を解決する組織(NPO)の一員として、学生の成長と地域貢献に向き合うプログラムです。
NPO法人STスポット横浜(神奈川県横浜市西区北幸)は、アートの力を現代社会に生かすことを理念に掲げ、劇場の運営や教育・福祉とアートの提携など幅広い分野の事業を展開する団体です。今回は2017年からスタートした福祉分野とアートの提携させる「地域における障害者の文化芸術体験活動支援事業」を軸に、事務局長の田中真実さん=写真・上=にお話を聞きました。
同法人は、創造環境と地域連携の2つの事業部に分かれており、現在11人のスタッフが運営に携わっています。創造環境事業部では芸術創造の拠点として同区にある劇場「STスポット」を運営しています。一方、地域連携事業部は、横浜市と協働しアーティストを学校へ派遣する「横浜市芸術文化教育プラットフォーム事業」や地域で活動する民間の芸術団体へを助成する「ヨコハマアートサイト事業」の事務局を務めるなど、地域に根差した芸術活動支援を軸に幅広く活動しています。
これらの事業の中で、今特に力を入れていることは2017年度から正式にスタートした「地域における障害者の文化芸術体験活動支援事業」です。STスポット横浜は、2006年ごろから、神奈川県や横浜市等と協働し、障害を持つ子どもたちとアーティストを結ぶワークショップの開催や、障害とアート・身体表現などの関わりをテーマとして扱う勉強会を積み重ねてきました。こうした事業が始まったのは「障害を持つ人は芸術に触れる機会が少ないのではないか」という問題意識がきっかけだったそうです。
2017年度の事業は、地域に暮らす障害者が、文化芸術体験活動を通して生活の質を向上させ、障害の有無に関わらず、社会の中で当たり前に生き生きと暮らすことができる共生社会を実現することです。これまでに築いてきたネットワークや調査結果を生かし、神奈川県内の文化施設・アーティストと障害福祉や介護事業者などをマッチングするプラットフォームづくりを目指しています。
具体的には、芸術活動を体験した人たちそのものや拠点と地域とのつながりの変化などについて、開かれた場で学び合う勉強会や、県内の障害福祉サービス事業所等に芸術家を派遣し、演劇やダンスなどのワークショップを企画しました。
勉強会には、地域作業所「カプカプ」(横浜市旭区)所長の鈴木励磁さん、地域活動支援センター 「ひふみ」(横浜市神奈川区) 施設長の中村麻美さんら、福祉施設運営者を招き、現場の話からアートとの関わりについても話をしてもらいました。アートに日頃関わっている人たちと福祉の現場で働く人たちがつながることで、福祉の分野を理解する人が増え、つながりをより密にしていくことを目指しています。
福祉は社会に必要とされながらも、実際に関わっている人以外には「関わりづらい・見えていない」という問題があります。一方でアート活動も、未だ人々からは「敷居が高い」と認識されることが多いという現状もあります。田中さんは、福祉とアートを連携させることで「障害のある人々とアーティストがつながり、何かを一緒に作り上げていくことで、アートに出会い、心の拠り所を見つける。そんな機会を増やしていきたい」と考えています。
といっても、田中さんは文化芸術について「『理解を深める』という堅苦しい形ではなく、『あってよかった』と純粋に楽しんでもらえたら嬉しい」と話しています。そして、STスポットが「「芸術文化のプラットフォーム」として機能し、異なる立場の人々をつなぐネットワークづくりを続け、少しでも多くの人たちがアートに親しみ「今よりもちょっと幸せだと感じられる社会」に近づけていきたい」と、未来のビジョンを語っていました。
石川天衣(明治学院大学・社会学部)
齋藤友弘(横浜市立大学・国際総合科学部)
小谷野友梨香(横浜市立大学・国際総合科学部)
和田奏穂(横浜市立大学・国際総合科学部)
取材を終えて、アートや福祉などそれぞれを別のものとして考えるのではなくすべての分野がつながり社会が形成されていると考えるべきだと思いました。そこでアートは今まで見えてこなかった社会の現状を知るきっかけとなり、違った分野同士を結びつける力があるとインターンを通して理解できました。
芸術においてはこれまでにないことを始めることも多く、共感してくれるような人同士を集めネットワークを構築することも必要であることも学びました。芸術に限らずに自分で何かやりたいときにこの姿勢を大事にしていきたいと思います。