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向こう三軒両隣が可視化され、ツナガル世界を生きる私たちの明日:インターナショナル・オープン・データ・デイ2017@横浜 「シェアリングエコノミー」 セッション

2017年3月4日(土)、横浜港大さん橋国際客船ターミナルCIQプラザで、インターナショナル・オープンデータ・デイ2017@横浜が開催された。主催は、横浜オープンデータソリューション発展委員会。横浜市と横浜港大さん橋国際客船ターミナルが共催した。オープンデータ・デイの横浜での開催は今年で5回目。テーマは「みんなで創発する世界最先端のデジタルシティ・YOKOHAMA~官民データ活用推進基本法への取組を契機として」。市民・行政・企業・大学から総勢80人以上が登壇し活動を紹介、セクターを越えて語り合い、交流を深めた。

メインステージで開催された『「シェアリングエコノミー」 セッション〜市民のチカラ × オープンデータ × シェアリングエコノミー〜』では、オープンデータ×シェアリングエコノミーの活用で地域課題解決の事例、具体的なアクションをサポートするメニューの紹介、市民の仕事を通じて地域の課題を解決する取組紹介などが行われた。
http://yokohamaopendata.jp/2017/02/23/iodd2017/

▽登壇者
甲田 恵子(株式会社AsMama 代表取締役社長)
岡北 有平(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐)
佐別当 隆志(一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局)
宮島 真希子(LOCAL GOOD YOKOHAMA/NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ 理事)
関口 昌幸(横浜市政策局 政策支援センター)

▽ファシリテーター
加藤 遼(株式会社パソナ ソーシャルイノベーションチーム チーム長)

・企画:一般社団法人シェアリングエコノミー協会
https://sharing-economy.jp/

「向こう三軒両隣が可視化され、ツナガル世界を生きる私たちの明日」

3月4日は「インターナショナル・オープン・データ・デイ2017」として、世界中の国や都市などの公共機関が取り組んでいるオープンデータ政策を支援し、誰もが自由に使うことのできるデータの利用を促進するためのイベントが、世界中で同日開催されるお祭りの日。

私たちの国・日本でも、「官民データ活用推進基本法」が昨年末に可決・成立し、国・自治体・民間企業が保有するデータを効果的に活用することで、自立的で個性豊かな地域社会の形成、新事業の創出、国際競争力の強化などを目指す動きが著しい。そんなオープンデータ元年ともいえる本年度、オープンデータに先進的に取り組んでいる横浜市のイベントで、「シェアリングエコノミー」がテーマのひとつとしてセッションに取り上げられた。

「シェアリングエコノミー」 セッション

シェアリングエコノミー協会事務局長の佐別当氏からは、「シェアリングエコノミーのビジネスモデルを活用した官民連携での街づくり」を推進するシェアリングシティ先進事例として韓国・ソウルやオランダ・アムステルダムの話があった。その上で、シェアリングエコノミービジネスの代表旗手であるUberが全世界の交通情報を握っていることを指摘し、政府・自治体・民間・NPOのコンソーシアムで社会をデザインしていくことの重要性について述べた。

経済産業省の岡北氏からは、「地域未来投資促進法案」によって、自治体と事業者がタッグを組んで地域経済の好循環を創出する取り組みを政府が支援する環境が整いつつあるとの話があった。また、その取り組みはデータシェアを起点とした「シェアリングシティ2.0」であることが重要なポイントとなるようだ。

オープンデータの利活用推進に向けて、「対話と創造」を掲げてアイデアソンやハッカソンを開催しながら企業・大学・NPOと連携してフューチャーセッションを展開してきた横浜市政策局の関口氏の、市民のニーズや課題、意志や希望に寄り添うことを第一義的に大切にされておられる姿勢や発言は印象的だった。横浜市という物理的地域の枠組みを超えた、なにか地域で懸命に毎日を生きる市民、すなわち、個人への温かな愛情と徹底して応援していくとの固い決意と情熱を感じる。シェアリングエコノミーは、技術だけでなく社会のICTプラットホームとして、リアルな「リビングラボ」すなわち「住民との共創」を活性化させていく仕組みとしてあるべき。朝から晩までの長い一日だったのに、そう語る関口氏の目は少年のようにキラキラと輝いていた。

リアルな住民の代表格として、アズママの甲田氏が、横浜市が推進している女性が働きやすい環境づくりの手厚いバックアップサポートを活用して起業した話があった。また、横浜市の「住民自治ネットワークの強さ」や「共助によるコミュニティ形成力」への驚きを、自身の体験を交えながら語った。オープンデータの前に、私たちがオープンマインドであることが大切。女性が働きながら子育てしやすい環境づくりとの横断幕を日本社会で掲げるも、言うは易し、行うは難し。日々の挑戦に真っ直ぐに立ち向かう甲田氏だからこそ、そのメッセージは力強く私たちの耳に届く。

ICTを活用して、住民との共創による地域課題解決の場と機会を数多く創出している「横浜コミュニティプラットフォーム」構築事業「LOCAL GOOD YOKOHAMA」に取り組んでいるNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの宮島氏からは、横浜には約60のコミュニティカフェがあり、それらが地域包括ケアの拠点となっているとの話があった。甲田氏が指摘した横浜市の市民力を示唆する具体的な事例として、ダブルケアの課題に直面する女性たちがコミュニティカフェの「場」の重要性に気づいてナレッジ・スキルシェアが地域間で始まることが挙げられた。

ファシリテーションを務めたパソナのパブリック本部ソーシャルイノベーションチームチーム長の加藤氏は、政府・自治体・民間・NPOそれぞれの立場からの論旨を上手に引き出した後で、「向こう三軒両隣の世界」がITと掛け合わさって、地域課題解決に向けたアクションの場としてのリビング・ラボが活性化していく未来を示した。

テクノロジーは、私たちの未来をボーダレスなものに変えていく。
そして、「シェア」の精神こそがヒトの心のボーダーを超え、「つながり」や「コミュニティ」を創造していく。

テクノロジーと「シェア」が掛け合わさる世界。
それは、私たちの「つながり」や「コミュニティ」の未来を、住んでいる地域や物理的要素や国籍等の地理的要素に縛られるものではなく、共有する「共通価値」によって存在するものに変えていく。そして、そんな未来は、もう始まっている。

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp