ローカルグッドプレイヤー

「横浜スタンダード」を広めたい~地域の課題を印刷技術で解決していく

横浜にCSRの考え方が広まるきっかけに「横浜スタンダード型企業」の認定制度があります。従来型の利益・効率最優先から脱却し、本業を通した社会貢献をしていくための企業指標です。その制度をサポートする「横浜スタンダード推進協議会」の理事長の江森克治さんに、横浜スタンダード推進協議会発足のきっかけと、代表取締役社長として経営する印刷会社「協進印刷」(横浜市神奈川区大口仲町108)のCSRの取り組みやCSRに向けた思いなどをお聞きします。

グローバルスタンダードではなく「横浜スタンダード」を

-「横浜スタンダード推進協議会」は何がきっかけで始まったのですか

2005年に「しあわせの選択」というテーマで横浜青年会議所(JC)で活動したのがきっかけです。「どっちが儲かるか」ではなく「どっちを選んだら幸せになるか」という基準で選ぶという提案をすることになりました。
時代は六本木ヒルズ族とよばれる人々がいる、儲け優先の利益追求型の社会。過酷な実力主義と成果主義が入ってきていて、終身雇用も崩壊し、社員が過酷な環境においやられ、そのしわ寄せとして不祥事なども起きていました。しかし、それは大企業の事情であり、中小企業は違います。過酷な職場環境になったら社員は離れていきますし、地元に根ざしていくのが地元密着企業としての宿命です。大企業のやり方がグローバルスタンダードとしたら、わたしたちは「横浜スタンダード」だと思いました。
大手重視の資産や評価額による市場の評価基準ではなく、我々が思う「いい会社」を明文化して、新しい企業の評価基準を作る必要があると考えました。客観的にわかる基準を作ろう、その基準をもとにした横浜の市場を作ろうというのが提案です。地域のことを考えて取り組んでいく会社がたくさんある町、横浜をめざし、横浜っていいねと言ってもらえるようになるのが狙いなのです。

-認定制度自体はいつ作られたのですか

提案を横浜市経済観光局の吉田正博課長(当時)に伝えたところ、面白いという話になり、横浜市立大学でCSR研究をしている影山摩子弥教授を紹介され、3者で集まり、認定基準を作ろうということになりました。JCとして一年間取り組んだあと、横浜スタンダード推進協議会という団体を作って、NPOとして活動を始めることになりました。認定制度自体は、吉田さんが走り回ってくれて2007年からはじまりました。

横浜JCマニフェスト「しあわせの選択」
http://www.yokohama-std.com/manufest.pdf
横浜スタンダード推進協議会
http://www.yokohama-std.com/index.html

江森さんにとって、CSR、社会貢献への第一歩になったことはなんですか

我が社では20年以上前から中学生の職業体験も受け入れていますし、昔から当然のように社会貢献意識というのはありました。体系的にやったのが、2007年のことです。グリーンプリンティング(グリーンプリンティング認定 環境に配慮した印刷製品が広く普及することを目的とし、日本印刷産業連合会で、独自の基準に達成した向上事業所を認定)をとろうということになりました。マネジメントシステムを入れるきっかけとして環境から取り組み始めたのです。すると今までやっていた社会貢献がシステムに乗って体系化されて形になってきました。影山さんの言う「CSRは経営戦略である」を僕はかなり忠実に守ってやっています。CSRの考え方が本業につながっていくと考えています。

情報紙を発行し地域を応援する

-やりがいを感じたエピソードはありますか

瀬谷区のあるNPOの朝市イベントがいい取り組みながらも周知がすすまずうまくいっていないと知り、支援したいと「シニアのチカラ」という地域情報紙を作りました。朝市に関わるシニアのみなさんをこちらが取材し広報することで協力者やお客さんが集まるようになり、情報紙に広告を乗せたいという企業まであらわれました。NPOにはお金がなくても、広告主をつなげることによって、次回からの情報誌発行ができるくらいの予算がつくようになってきます。情報紙をきっかけに朝市を知りスタッフとして参加することになったシニアの人たちが生き生きしています。今回はお金をもらってやった訳ではありません。いい取り組みだから、我が社の本来業務の中で支援したいと思ったからやっています。もちろん儲かるような仕組みにした方がいいのですが、それはこちらのこれからの問題です。印刷という仕事をつかって課題をどう解決していくかということに知恵を絞ることにやりがいを感じます。

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「できない」から「できる」へ CSRはイノベーションのきっかけ

CSR導入に関して障壁になることは、何だと思われますか

予算のない中でやるということです。でも、ぼくはそれがイノベーションだと思うのです。お金を出せば出来るというのは当たり前です。普通だったらお金がなくて出来ないことだけど、知恵を絞ってみんなで連携したら実現するということがイノベーションです。恵まれた状態でやる大企業のCSRと違い、中小企業は知恵を絞ることにより「こうやればできた」という新しいやりかたが生まれます。もちろん、仕事としてやれないと継続できないから一回だけの支援に終わってしまいます。継続するための元手をどこで稼ぐかというのが大事になってきますね。

横浜スタンダードを広めたい

経営者としてCSRをどうとらえていますか

経営する面から考えても、事業活動とCSRは一体化しています。うちの会社は「社会課題を印刷・コミュニケーションの技術を持って解決する」というプロフェッショナルになれたらいいと思っています。こまったことがあるとうちに相談に来る。そんな会社になれたらいいなと思います。

そのためには考え方を普及させ、社会がそうなっていかないといけない。「全印工連CSR」認定に印刷業界も取り組み始めています。みんながCSRに取り組み、ホームページを持つのと同じ感覚でCSR報告書を持つ企業が増えてきてほしい。印刷会社としては、それがマーケットにもつながるし、CSR報告書を作るときに○○印刷さん相談に乗ってくださいといってもらえるポジションになりたいですよね。

CSRは本域と思っています。会社には、理念がないとだめだし、もうけもないとだめです。でも我々企業もこれからの社会を作っていく一つの要素ですよね。社会はいろんなものが寄せ集まってできている。小さくても一員として胸を張ってやっていかなくてはならないという思いです。

<企業プロフィール >
株式会社協進印刷
代表取締役社長 江森克治
住所 横浜市神奈川区大口仲町108番地
業種 印刷業
URL  http://www.kyoshin-print.co.jp/

 

 

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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