2021.09.06
ウッビースタイル(Woo-By.Style)は「どんな仕事でも、ママたちがやる」をポリシーとしている会社です。このコロナ禍でも、水筒の肩ひもパットやタブレットPCが導入された横浜市の小学生向けの専用バッグなど、ママ目線のアイデア商品を次々と生み出しています。そんなウッビースタイルの代表取締役、野村美由紀さんに同社の強みやコロナ禍での試みなどについて話をうかがってみました。
野村さんがウッビースタイルを立ち上げたのは2008年。ハンドメイド商品の委託請負販売から始まり、近年は主婦・ママたち自身が消費者目線で企画するイベント運営を中心に事業展開を進めてきました。イベント運営では多くのママたちに業務委託で仕事をしてもらっています。販売するハンドメイド商品を作る人もいれば、現場運営に参加する人もいて、多いときには1つの現場で50人が携わることもあります。しかし2020年春、コロナの影響でイベントが次々と中止になってしまいました。
「仕事がないから業務委託の人はさようならというのはあまりに切ない。『それなら、自分たちにできることをやろう。みんなの商品を預かって売っちゃおう。お店を持っちゃえ!』と考えたんです」(野村さん)
起業してから約10年、ショップやイベント運営で経験を積んだ今なら、自分たちの知恵を生かせるのではないかと考え、早々ポップアップショップを出店してみます。しかし過去の人気商品を並べてみたものの、思ったようには売れません。売り方も流行もかつてとは違っていたからです。
そこでマーケティングをやり直して戦略を再構築。2021年1月、相模鉄道本線三ツ境駅に期間限定の店舗を出店しました。それが好評を博し、一定の手応えを得ることができました。
そして2021年5月、相模鉄道本線希望ヶ丘駅近くに「ハンドメイドショップ ウッビー希望が丘店」をオープン。この店は期間限定ではなく、継続的に運営する予定です。
ハンドメイドショップ ウッビー希望が丘店で6月に一番売れたのは、冒頭でも紹介した水筒の肩ひもパットです。
「水筒の肩ひもって固くて少し痛いんですよね。薄着の季節だから擦れてしまって」(野村さん)
こういったきめ細やかな気遣いの光る商品が生まれるのは、ママ主体の企業ならでは。
7月に入ってから人気が出始めたのはタブレットを入れるバッグ。横浜市の小学校は一人に1台ずつタブレットを配布することが決りました。そのバッグを用意するよう指導する学校が多いのですが、「フックにかけられるもの」「背負えるもの」など求められる仕様が学校によって異なっています。
「ママたちがいろいろな学校のお便りを集めて、どんなデザインにするのかみんなで話しています。そこがウッビースタイルの強みです。リサーチどころか、私たちは当事者なので、そこは強いです」(野村さん)
ウッビースタイルはディーセントワークを重要視しています。ディーセントワークはまだ一般にはなじみのない言葉かもしれませんが、1999年に開催された「第87回ILO総会(国際労働機関総会)」によれば「権利が保障され、充分な収入を生み、適切な社会保護が供与された生産的仕事」とされています。ウッビースタイルの目指すディーセントワークは、それよりももう少しシンプルにとらえています。
「意義のある仕事をして、きちんとやったことに対して対価をもらうことがポイントかなと思っています」(野村さん)
具体的にはどのように取り組んでいるのでしょうか。ウッビースタイルでは3人で1つのチームを組み、フルタイム1人分の仕事を担当します。ママが働く上で一番のネックは、子どもの病気などで急な休みが必要になること。フルタイムでの勤務は難しいのです。しかし3人1組ならお互いがカバーし合えます。さらに、3人1組のメリットはそれだけではありません。
「3人の知恵が集まるので、1人分どころか1.5人分のパワーを発揮するんです。発注してくれる人も喜んでくれます」(野村さん)
ママたちの短所を逆に長所に変えてしまう。これこそがウッビースタイルの強みなのです。
ウッビースタイルの今後の予定を聞きました。そのいくつかを紹介します。
まずハンドメイドショップ ウッビー希望が丘店が入居するK-1ショッピングセンターの1階広場で、毎週水曜日にミニマーケットを始めました。現在出店者も募集中です。ハンドメイドショップ ウッビー希望が丘店は食品は扱っていませんが、ミニマーケットではクッキーなど障害のある人が作ったお菓子や地元メーカーの人気の加工品なども販売しています。
また毎月第1土曜日には、横浜市中区山手町にある「えの木てい」でもマーケットを開催しています。高齢化が進む山手地区を元気にしたいと始めたものだそう。ここではウッビースタイルの雑貨のほか、オリーブオイルや花、野菜なども扱っています。また、「えの木てい」で賞味期限が近づいた菓子などもお買い得価格で販売されています。
「私たちは地元の困っている人に楽しんでいただくことをコンセプトにしているので、知っていただけると嬉しいです」(野村さん)
ウッビースタイルに少しでも興味をもたれた方はぜひ訪れてみて下さい。
野村さんから話をうかがっていると、ウッビースタイルのバイタリティに驚かされます。コロナ禍で暗いニュースが目立つ中、彼女たちは臆することなく自分たちができることを着実にこなしています。次はどんなことを始めるのでしょうか。ウッビースタイルの活動から目が離せなくなりそうです。
1978年生。広島在住。東北大学工学部中退。大学中退後、警察官を拝命し広島県警察へ。警察では鑑識や知能犯捜査などの刑事部門や、中四国一の繁華街を受け持つ新天地交番などで勤務。15年間警察を勤めた後に辞職。現在はライティングなどを中心に活動している。ライティングの得意分野は教育関係など。