ローカルグッドプレイヤー

食を通じて、地元の生産者の想いを伝える

横浜ビール(横浜市中区住吉町6)が運営するレストラン「驛(うまや)の食卓」の1階にある醸造所で作られたクラフトビールは、驛の食卓をはじめ市内に展開するレストランで、地元の食材と共に楽しむことができます。レストランのメニューには、食材の生産者が顔写真付きで紹介されています。ビールと食材を通して地元の人々に地元の生産者の想いを届ける横浜ビールの取り組みについて、代表取締役社長の太田久士さんにお聞きしました。

-横浜ビールが考えるCSRとはどんなことでしょうか

横浜ビールは「地元のビールを地元の食材と共に地元の方々へ」をコンセプトに事業を行っています。僕の仕事は食を通して、地元の生産者さんの想いを地元の方々に伝えることだと思っています。海苔屋さんや醤油屋さんなど生産者さんが作った「もの」を伝えるのではなく、その先にある生産者さんの「想い」を伝えることが重要だと考えています。地元の皆さんには、自分の食べたものを通して、それを作った人達の想いを通して街の健全な姿を知り、自分の街を好きになり誇りをもってもらいたいという思いがあります。

生産者さんの想いを伝えするために、一番大切にしていることは、生産者さんに会いに行くことです。社員やアルバイトスタッフの人全員に、会いに行くように言っています。何度も何度も通っていれば、その人のことが分かってきますし、好きになってきます。生産者の方を知っていれば、お客様への料理の紹介のしかたも変わってきます。FAX一枚で横浜の小松菜下さいと発注することは簡単ですが、それだけでは地産地消ではないと思うのです。街yokohamabeer2の健全な形を伝えていくこと、そのために会いに行くことが重要だと思っています。

 

自分も横浜ビールを飲みますし、もちろん味も美味しいと思います。でも、ビールは周りがあってこそ引き立つので、まずは周りを引き立てるというか、つなげるということを考えています。そうやって、毎日街の人たちをつなげることが、僕の考えるCSR活動であり社会的責任だと思っています。

-横浜ビールを始めたきっかけを教えて下さい

もともと、この本社ビルは1994年の酒税法の改正で最低製造数量基準が緩和された時に、別のアパレル企業が醸造所とレストランを開業した場所でした。当時は、日本各地で町おこし的に地ビールが誕生したのですが、軌道に乗ったメーカーは多くなかったと思います。ここも数年で経営していた企業が事業撤退を決めたため、居抜きでやってみないかという話しをいただき、友人と事業を引き継ぐことにしました。

そこでまず考えたことは、地ビールって何だろうということでした。麦を使って60キロリットル以上作ったら地ビールと言えるが、本質を考えるとそういうことだけでは無いはずです。地ビールは、その街のお酒としてその街の人たちが愛してくれるお酒じゃないといけない。横浜ビールというなら横浜の人たちに好かれるビールでないといけないと考えました。

でも、上手くいかなかったのには何か理由があるわけですから、最初は大変でした。引き受けた当初は、目先の今日明日の売上を上げることを一生懸命考えていました。でもそうすればそうするほど、自分が考えている本質からどんどん離れていってしまい、本当に疲れ切ってしまいました。そんな風に危うくなった時に、自分が社長になり、はっきりとしたコンセプトを打ち出しました。それが「地元のビールを地元の食材と共に地元の方々へ」というコンセプトです。街のお醤油を使った地元食材の料理を地元の方に食べてもらう。生産者の想いを伝えたいくらい何度も会いに行って相手のことを好きになる。そこに信頼関係が生まれて、それからお店が変わり始めました。

伝えるべきものはレストランのメニューではなくて、コンセプトであり、人なのです。そうすることで初めてお客様に伝わり、横浜の食の輪というのが一つできました。その輪が、街の印刷屋さんとか、造園屋さんとかいろいろな業種にも広がると、横浜という一つの輪が出来る。こんどは、東北の福島や岩手や宮城との関係が生まれて、繋がりがもっともっと大きくなってきています。そうしていくことで最終的には、日本が活性化するといいなと考えています。なにも特別なことではなく、昔からやってきたことだと思うので、あたりまえのことをやっていれば元に戻ると、正しい形になると信じています。それがCSRであり仕事だと思っています。

-企業経営以外の部分で、何か地域と関わる活動を何かされていますか

一つCSRと言えるかも知れないと思っている活動に、大川印刷(戸塚区矢部町)社長の大川哲郎さんとアクションポート横浜(中区山下町)と一緒に開催している「大人への出発(たびだち)」というイベントがあります。毎月第4木曜日の夜に7時から、レストラン「驛の食卓」の1階のカウンターに、横浜の学生と横浜の経営者が集まって語り合うイベントです。ただお酒を飲みながら話しをするだけでなく、相談をしたり思いを話したりしています。目的は、横浜の学生さんたちに街の大人たちを見て、一緒に働いてみたいと思ってもらうことです。そのためには、まずは見本を示さないといけない。堅苦しい見本ではなく、楽しんでいるところ、格好いいところを見せて、大人って楽しいよと伝えたいと思っています。楽しいというのは、ゆるく楽にではなく、自由にのびのびと出来るという意味です。

横浜といえども、東京の大手企業を目指して就職活動をしている人が多いのが実情です。でも、横浜の学生さんが、自分の街に就職をして仕事をするのは、僕にとっては今まで話したことと繋がっているのです。

横浜には良いイメージとブランド力がありますから、こういった地元の雇用を促進する活動を、横浜でモデルケースとしてやることに意味があります。イメージやブランド力をベースに、街の人たちに誇りをもってもらえるような動きを作らなければならないと思っています。そういう動きを作るのに、地元の食材であったり調味料であったり、街の人たちの関わりといのは、非常に伝わりやすい媒介なのです。

 食を通して街を伝えて、ビール飲んだ方々が、美味しかっただけでなく自分の家族や住んでいる街に想いを馳せ誇りを持てるようにしていきたいと思っています。

<企業プロフィール >

株式会社横浜ビール
代表取締役社長 太田久士
住所 横浜市中区住吉町6-68-1横浜関内地所ビル3F
業種  クラフトビール製造販売、店舗経営
URL  http://www.yokohamabeer.com/

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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