ローカルグッドニュース

横浜会議×フューチャーセッション 「持続可能な地域社会における新しいビジネスの姿」

3月11日、アクセンチュア みなとみらいオフィスにて、オープンイノベーションについてのフューチャーセッションが開催され、企業の方を中心に、行政、NPOの方々約40名が参加し、活発なダイアログが交わされました。

まず話題提供として、横浜市政策局 関口昌幸氏より同市のオープンイノベーションに関する取組が紹介された後、アクセンチュアから企業としてオープンイノベーションに取組む上でのチャレンジが提供されました。続いて、建築家であり横浜国立大学大学院Y-GSA准教授の藤原鉄平氏、コミュニケーションプロデューサーであり慶應義塾大学特任助教の若新雄純氏、両氏のファシリテーションにより、「持続可能な地域社会における新しいビジネスの姿」 というテーマで参加者全員によるディスカッションが行われました。

■難解なテーマを難解な言葉のまま議論することの危うさPicture3
昨今、持続可能な地域社会の構築や、オープンイノベーションの必要性を多く聞くようになりました。しかし、持続可能な地域社会とはどういうものなのか、そしてオープンイノベーションの果たす役割とは何でしょうか。実は大人が分かっているつもりでいるこれらの言葉の意味が深掘りされないまま議論が進められ、次のアクションの起こし方がわかりづらい状態になっているのではないでしょうか。そこで、「持続可能な地域社会」とは何かという出発点を考え、そこから企業という立場で何ができるのかが議論されました。

■「持続可能な地域社会」の意味、小学生に説明できますか?

ディスカッションの前半は、「持続可能な地域社会」を小学6年生に分かるように説明する。をテーマにテーブル毎に議論され会場全体に共有が行われました。その結果、次のような説明がありました。

  • おじいちゃん、おばあちゃんがずっと暮らしやすい自治体
  • ご近所さんにいつでも頼れる人達がいる状態
  • (小学生が)おばあちゃんになるまで、水や空気がきれいなまち
  • (小学生が)将来年をとってから地元に帰りたいと思ったときに、帰ってこられる社会 など

小学生が理解できるように説明するには、難解な言葉では伝わりません。この議論では、実は自分が分かっているつもりになっている言葉がいかに曖昧な定義になっていたか、そしてそれが他者とは言葉が示す内容も範囲も異なるということを、参加者全員が感じていたようでした。

■企業が地域のためにできることは?

後半のテーマは、「パパとママとお隣の○○ちゃんたちがずっと一緒に今のまちで暮らせる仕組みをつくるために、私の会社ができること。」とし、参加者が企業人としてできることは何かが議論され、下記のような意見があがりました。

  • ビジネスで儲けて法人税を納める
  • 地域の魅力を伝えるための広告を製作する
  • 企業と地域市民など、異なるセクターにいる人をつなげる翻訳家の役割をする
  • 会議室を廃止し公園で会議を実施するなど、ビジネスを地域に溶け込ませる仕組みをつくる など

会社組織として出来ることの一つは、もちろん「ビジネスで儲けて法人税を納めること」です。しかし、地域市民に対する価値は必ずしも金銭価値だけに留まらないようです。

 

■ビジネス目線だけでは生まれない価値もある

Picture2例えば、ファシリテータの若新氏がプロデュースしている鯖江市の女子高生が市の職員となって地域振興の企画をするという取組みでは、市民どうしの持続的なコミュニティが生まれ、拡大しつつあります。ビジネスとしては成立していない取組や組織でも、価値を増大させるエコノミーとしては成立しているのではないかという意見があがりました。 ディスカッションではビジネスとエコノミーについて、それぞれ「王様」と「神様」で例えられました。ビジネスの世界における価値観では、皆が同じ「王様」という立場を目指して争い、勝ち抜いたものが成功とされます。しかし、鯖江市の女子高生の価値観はそれとは異なります。自分が生み出すことが大事であり、それを誰か一人でも好きになってもらえばそれでよいのです。誰か一人に信者になってもらえれば、それを生み出した自分は「神様」になれます。ここから、「好きなものを生み出せる環境を作る」ことが企業にとって大事なのではないかという意見が出されました。

若新氏の話に加え、地域の高齢者と共に編み物会社を運営している方からも同様の意見がだされました。地域の高齢者が編み物を生産するにあたり、生み出されている価値は金銭的なものばかりではなく、もの作り自体にもあるといいます。自分が作った商品を手に入れた人が喜んでくれることが、高齢者の元気の源になっているということです。一方的な雇用関係や指導の関係性ではなく、自分の好きなものをつくり誰か一人にファンになってもらうこと。それこそが、多くの市民の能動性を引き出す秘訣のようです。

■今回イベントの気づき
小学生に説明をするという一見簡単そうに見えることが、実際にやってみるとなかなか難しいものです。小学生は難解な言葉は理解できない共に、大人の世界でまかり通っている建前も通じません。そのような状況で大人は与えられたテーマをより簡単に、そしてより自分ごととして捉えて議論できたことにより、会場全体のディスカッションが盛り上がったのではないかと思います。今回のディスカッションは正解を導くものではありませんが、このようなダイアログを続けることにより、オープンイノベーションに向けた次のアクションにつながっていくのではないかと感じました。

このイベントは、今後継続的に開催される見込みです。次回以降ぜひご参加ください。

===========
○ファシリテータ紹介

藤原 徹平氏(横浜国立大学大学院Y-GSA准教授)アイキャッチ4

1975年横浜生まれ。横浜国立大学大学院修士課程修了。2001年より隈研吾建築都市設計事務所で世界20都市以上のプロジェクトを担当。2009年よりフジワラテッペイアーキテクツラボ代表。2010年よりNPO法人ドリフターズインターナショナル理事をつとめ、ファッション・建築・ダンス・パフォーマンスなど異文化の融合が生み出す新しいプロジェクトを幾多の都市で実践している。2012年より現職。

http://www.y-gsa.jp/studio/fujiwara/

 

・若新 雄純氏(コミュニケーションプロデューサー/慶應義塾大学特任助教)アイキャッチ5

福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。

若新ワールド http://wakashin.com/

 

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

ニュース一覧へ戻る