ローカルグッドニュース

11月18日開催 共働舎萩原さん×横浜国立大学池島さん対談レポート

社会福祉法人「開く会」が11月19日に開設した、障がい者の働く場「ファール ニエンテ」で社会福祉法人開く会 共働舎 施設長萩原さんと横浜国立大学大学院准教授池島さんの対談が行われました。

ファール ニエンテでは庭作りがすすんでいる。

ファール ニエンテでは日々庭作りがすすんでいる。

「ファール ニエンテ」は、主に知的障がい者の方がパン製造販売、イタリアンレストラン、小麦や野菜の生産を行う施設です。

対談は、様々なテーマについて、萩原さんと池島さんがトークをする形式で行われました。

□ファール ニエンテの持つ意味とは

萩原さん

25年にわたって共働舎で園芸に取り組んできたなかで、植物というものが障がいがあるひとにとって良い素材であることがわかったきた。その植物のもつ力というのは、障がいがある人だけでなく、地域のひとにとっても共有の財産になっていくのではないかということを考えていた。私はこの場所の近くに住んでいるが、暮らす中で人の居場所の無さを感じていた。障がいがある人が働くと同時に地域の人が交流し合う、気軽に立ち寄れる場所をつくりたいなあという想いからファール ニエンテをつくった。

池島さん

研究テーマは農業経済学で、農業が地域にどういう役割を果たしているか、地域の中で農業という産業がどういう形で位置づいているかという視点をもって研究をしている。ある地域でまちづくりの基礎調査をしてほしいという依頼があった。その地域は農地がたくさんある地域だったが農地が転用されてミニ開発が進んでいた。調査の結果、農地所有者の4分の1ほどは地域外の住民であることがわかった。地域の風景を支えるような土地を地域外の所有者が持っていて、地域住民ではないからこそ、自分の利害に基づいて転用・開発していくことがあった。この調査の経験から、農地をもつ意味、土地をもつ意味をいかに考えるかがまちづくりの根本的なところだなと思うようになった。土地の問題を考えることなしに、住民の方の運動だけではまちづくりは成り立たないように感じた。

池島祥文さん 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授

池島祥文さん 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授

横浜に着任し、横浜でも同じような地域はないかと調べていたときに泉区を紹介された。転用を契機に人口が増えていて、農地がすこし荒廃していて、街としての景観が変わりつつある地域として。

学生とともに農地の取引状況をしらべていくと、横浜の場合は地域内の農家が地域の農地を所有していることが多い。ただ、農地転用を通じて、所有権が域外に移転しまうことが多いことがわかった。転用された元農地は資材置き場、駐車場、店舗、工事現場などに変わっていく。泉区では農地転用が進んでいるものの、一方で泉区は農地が多く、農業が盛んな地域だと評される。このギャップはなんだろうかと学生とともに調査を続けている。資材置き場、駐車場、店舗、工事現場など農地から転用されてしまった土地と同じ境遇をもちながら、ファールニエンテが農を活かした風景を持ちつつ立ち上がるのは、新たな可能性として面白いなと感じている。農地転用において、その土地は農業の痕跡を残さない用途にかわってしまい、農業の香りのする建物の提案もなかなか見られない。その点、ファール ニエンテは市街化調整区域ではあるが、人の営みや手をいれたことを感じることが出来る、農業を活用した雰囲気を醸し出す場所として、多く転用の仕方を見直す新しい土地利用の先行事例になるのではないかとおもう。また、駅前開発のために市街化区域への線引きを求める意見もあるものの、市街化調整区域だからこそ、駅前にファール 二エンテのような施設をつくることができたともいえよう。こういう駅前の「開発」の仕方についても、農的な風景をもつ駅があるという先行事例にもなったと思う。

□地域のひとが働く、土を耕す場所として

萩原さん

今回、新たにスタッフの募集をしたところ、圧倒的に近隣のひとたち、8割は女性からの応募だった。近場で子育てをしながら働ける場所として、近隣に住まうひとが捉えてくれていると思う。

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対談は、オープン前のファール ニエンテで行われた。

今まで市民農園のようなものを借りながら農作業をやってきたという人たちの中で、ただ自分の楽しみとしてひとつの農園を耕すのでなく、好きなことが地域や障がいのあるひとのためになっていくと感じてくれている人たちがいる。

私たちがふと景色をみたときに、目線の先に「ここまでが誰の土地」とラインが引いてあるわけでない。場所とチャンスさえあれば自分の所有する土地を超えて、そういう公的な場所のために土を耕したい、関わりたいと思っているひとがいらっしゃるというのが今回新たにわかった。今後は、そういう人たちの力をどういう形で取り込んでいくかということを考えていきたい。

池島さん

一般的には社会福祉法人につとめるというと高齢者の世話、障がい者の相手、加えて、待遇は厳しい、賃金がひくいというイメージで、そういった業界に若者たちは入っていかない。普段学生と接していても、彼らの職業の選択肢に社会福祉法人という道は入って来ることが少ない。しかし、共働舎のスタッフの方々の業務範囲、経験は幅広い。経営や調理、農作業など社会福祉法人の業務のイメージを超えたものになっている。福祉産業のイメージを変えている施設だと思う。大卒者の就職感が変わる可能性がある。

萩原さん

私自身が働いていてとにかく楽しい。障がいがある方の近くにいることはなにより楽しいし、考えさせられることが多い。そういう意味ではクリエイティブで面白い仕事なんだけどなと思ってはいるのだが、なかなか伝えられていない。ファール ニエンテに来て、働くスタッフの様子を近くで見てもらえたら嬉しい。

□農業の価値を経済的な価値で換算すると・・

池島さん

農業には、食料生産のほか、国土保全や水源涵養などの多面的機能があり、風景をつくる、緑をつくるなどの効果も発揮している。しかし、経済的側面が弱いからこそ、多面的機能をアピールして農業を残そうとするのだという懐疑的な見解もある。食料供給という面で農業は貨幣換算できるが、景観をつくるなどの機能はその対価をお金に換算して表現しづらい。そのためら、農業が育む包括的な価値を経済的側面から評価しようとすると行き詰まる場面がでてきてしまう。むしろ、貨幣換算できない・代替のきかない価値や機能が、農業にはあると考えている。

したがって、貨幣的な側面だけでなく、暮らしを営む上での不可欠な要素だと位置づけて農業を評価してみたい。食べ物というのは人間の毎日の生活の根源に位置しているものだが、食料がどこから来ているのか、どこで食べるのかというのがその地域の生活の指標になりえる。栄養素をとるだけでなく、時間と空間を味わいながら食べる生活を提供する意味は、「今後求められる豊かな生活」にとって大きいだろう。そういった機会を提供する機能として農業を評価できるのではないだろうか。また、そうした農業に対して、クラウドファンディングなどの資金サポートを通じて、「暖かいお金」の使い方の出口になる可能性を秘めているのではないか。

□六次産業化としての可能性

*六次産業化とは、第一次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした食品の加工や製造、その販売など第二次産業や第三次産業にまで事業を拡大することを意味します。

池島さん

「農商工連携」から、2009年の政権交替で「農業の六次産業化」が政策的に言われるようになった。現在政策的に取り組まれている六次産業化はやや第二次・第三次産業の巨大資本による主導に傾斜しつつあり、本来の意図とは少し違っているが、元々は「農林漁業者が第二次産業、第三次産業を手がけ、付加価値を高めていく」という趣旨だった。本来の意味をふまえると、現在の六次産業化支援策は産業振興策という点からは効果があるかもしれないが、それが必ずしも地域振興策につながるとはいえないと理解する必要もある。本来、産業振興策は地域振興策につながらなければもったいないわけだが…。つまり、誰が、どこで、どういう目的で、六次産業化を進めるのか、行政サイドだけでなく、地域市民も事業者も考えていかなければいけない。域外の巨大資本による主導では、そこから得られる経済的価値が地域外に漏れ出てしまい、農業者は単なる素材供給者にとどまる可能性が高い。地域の農業者主体による六次産業化によって、地域活性化につながっていく形が望ましいだろう。ファール ニエンテが地域の人々や農家さんと連携をして、事業を進めていくのは本来の意味での六次産業化につながることだろう。

萩原さん

ファール ニエンテで六次的なことを障がいがある人がやっているということ、一次から二次三次につながっていることを手に取って、目でみて実感していただける場としては意義があると思う。ここを拠点にして六次的な動きが色んな場所で出来てくると思う。開く会、共働舎の運営により、パン屋さんやレストラン、お菓子づくりなど形にしていくひとたちとの繫がりの蓄積はあるので、そういう繫がりを活かしていきたい。

□今後の展望

萩原さん 

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萩原達也さん 社会福祉法人開く会 共働舎 施設長

泉区の食材をどれだけとりこんで、商品にどれだけ反映させていけるか、また、樹木を守り育てていくことを大切に、また、そこに地域の人たちをどれだけ巻き込んでいけるかを考えていきたい。農的な空間という観点でいうと、ファール ニエンテがあるだけではあまり広がっていかないのかなとおもう。地域の課題を吸い上げたりする仕組みがあればより農的な空間に色んな人を巻き込んでいくダイナミックな動きが出来てくるのではないかとおもう。ファール ニエンテから歩いて数分の畑で当面は1トンの収穫を目指し、小麦づくりをしていく。

池島さん

障がい者の方が地域にとけこむ、そういう取り組みが広がっていくことは望ましい方向だと思う。現在の活動を応援している。いままではそこに行かない限りは施設の中にいる障がい者の方とふれあう術がなかった。ファール ニエンテの場合は、レストランにご飯をたべにくることで自然な形でふれあいを作ることが出来る。また、六次産業の話とつながるが、ファール ニエンテは、加工や接客など幅がひろい取り組みをしていることで農業の可能性を広げている。そして、その起点には農業がある。農業の可能性を体現していると思う。

 

ライター紹介

「LOCAL GOOD YOKOHAMA」は、 サービス、 モノ、 カネ、 ヒト、 情報の循環をつくっていくことを目指し、インターネット上の場と、インターネットを超えた地域の現場両面から、地域をよくする活動「地域のGOOD=ステキないいコト」に市民、企業が参加するきっかけをつくっていきます。活動に加わり、メンバーとして地域に関わっていくローカルグッドサポーター、プロボノを募集しています。

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