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いのちの木「おばあちゃんの編み物会社」設立に向けた座談会開催

現在「おばあちゃんの編み物会社」設立にむけて、クラウドファンディングの仕組みをつかった資金調達に挑戦している編み物サークルの女性たちの座談会が、11月12日仲町台のコミュニティカフェ「いのちの木」(横浜市都筑区仲町台)で行われました。

いのちの木「おばあちゃんの編み物会社」設立に向けたおばあちゃん座談会開催

いのちの木では毎週水曜日 編み物サークルが行なわれている

「いのちの木」では、毎週水曜日女性たちが集まり、編み物サークルが開催されています。NPO法人「五つのパン」(理事岩永敏朗さん)が運営する「いのちの木」がオープンしたのは2012年1月のこと。それから1年後、編みかけの編み物の続きを編んでほしいというある女性の依頼に岩永さんのお母さんが応えたことをきっかけにゆるやかに「編み物サークル」が始まりました。コーヒーを飲み、おしゃべりに花を咲かせながら好きなものを編み、コミュニティカフェ内で展示販売をしていた編み物サークルに2014年の春、変化が訪れます。ファッションエディターをしている楠佳英さんから、新しいブランド「Beyond the reef(ビヨンドザリーフ)」で販売するニットクラッチバック制作の依頼があったのです。

ビヨンドザリーフのニッククラッチバック作りに最初に参加したのは、編み物サークルの岩永隆子さん、宮川昌子さん、島田玲子さんの3人でした。商品作りという新しい試みは、趣味の延長で続けていた編み物から、編み物を仕事にするという変化をもたらし、いつしか自分たちのブランドを立ち上げたいという女性たちのチャレンジの気持ちを生み出しました。

今回の座談会では、編み物サークルの女性たちとビヨンドザリーフ代表の楠佳英さんがトークゲストとなり、クラッチバックのブランド立ち上げや編み物会社設立に向けたこれからのビジョンについて語りました。

ビヨンドザリーフ代表の 楠佳英さん

ビヨンドザリーフ代表の 楠佳英さん

ファッション業界で仕事をしている楠さんは、編み物好きの義母、楠美智子さんがご主人を亡くされた後にひとり暮らしを続けていることが気になっていました。あるとき、美智子さんの好きな編み物で何かできないかと考え、自分が考えているニットクラッチバックのアイデアを話し、サンプルを作ってもらいました。その試作第一号が予想をはるかに上回る素敵な出来だったことが、「ビヨンドザリーフ」のブランド立ち上げにきっかけになりました。楠さんは、生き生きと楽しそうに編み物をする美智子さんを見て、もしかしたら他にも同じように独り身になった女性で編み物の技術をもっている人がいるのではないか、そういう女性たちに社会参加を促し、生きがいを感じて貰うことができるのではないかと考え、「ビヨンドザリーフ」のパートナーとなってくれるコミュニティを探しはじめました。インターネットで情報を探すなかで、いのちの木の記事を見つけ、早速岩永さんに連絡をとりました。それが、楠さんといのちの木の編み物サークルの女性たちとの出会いでした。

ご主人を亡くし慣れない土地で一人暮らしをしている高齢の女性たち、生きづらさを抱える若い女性たちやママ達の集まるコミュニティカフェで、趣味の編み物をしながら、できあがった作品を販売するーーいのちの木の編み物サークルは楠さんが考えていたコンセプトと近いものでした。楠さんと編み物サークルの女性たちとのコラボレーションが始まりました。2014年6月に販売開始された「ビヨンドザリーフ」のニットクラッチバックはファッション雑誌「JJ」で紹介され、今ではWEB通販の1ヶ月分の予約が30分で完売するほどの人気商品になりました。

「ビヨンドザリーフ」のニットクラッチバックは小さなサイズで1万5千円、大きなサイズのものは1万8千円ほど。楠さんは商品の価格を決めるに際して、編み物の内職賃金をいろいろと調べたところ、ひとつ編んでも賃金は数百円にしかならず余りにも安いことに驚いたそうです。「このクラッチバックは決して安い商品ではありません。ただ、編み手に正当な対価を支払うためのぎりぎりの価格です。私は編み手である女性たちの手仕事に対して正当な対価を支払いたい。そうでないと意味が無い。おばあちゃんが編んだバックだから支援のために買うというのではなく、バック自体の良さを評価してもらい、可愛いから、気に入ったから買ってもらえるように商品をつくっていかなければいけない」とその思いを語りました。

編み物サークルの宮川昌子さん

編み物サークルの宮川昌子さん

ニットクラッチバック製作の最初のメンバーである宮川昌子さんは、「好きでずっと編み物をしていたが、楠さんとの出会いでクラッチバック作りに参加するようになった。商品を編むというのは大変なことで、試行錯誤しながらやってきた。収入が入ることは、張り合いがでる」と話してくれました。

編み物サークルのメンバー 左から島田玲子さん、鈴木あずささん、岩永隆子さん

編み物サークルの
左から島田玲子さん、鈴木あづささん、岩永隆子さん

同じく、最初のメンバーの一人である島田玲子さんは、「かぎ針編みが得意で編み物をやってきたが、クラッチバック作りでは棒針編みに挑戦した」と言います。

また、最近編み物サークルで編み物を習い始めた鈴木あづささんは、先輩の女性に教わりながら先日初めて商品を1つ完成させ、「自分の編み物が初めて商品になったことが、思わず泣きそうになるほど嬉しい」と話しました。

編み物サークルに集まる女性たちは、何度も試作品を作り、均一の品質で編み上げる練習をしながら商品作りに取り組んでいます。

編み物サークルの創設メンバーである岩永陵子さんは、「クラッチバック製作に携わり収入を得ることで、新しい毛糸を購入し、また新しいものづくりにチャレンジができる」と言い、いのちの木に通うことについて「若い頃は戦中戦後の時代で青春なんてなかった。今まさにこの編み物をやることで青春時代を過ごしている」と話してくれました。

最初のニットクラッチバック試作品を編まれた 楠美智子さん

最初のニットクラッチバック試作品を編まれた
楠美智子さん

楠さんの義母である楠美智子さんは、試作第一号を作成したことについて、「佳英さんのアイデアが良かった。主人を亡くしてから、ずっと独りで家の中でレース編みを続けていましたが、今はこうして同じ境遇の人と話しをしながら、楽しく編み物をしている」と言います。

編み物サークルの渡邉嘉津江さんと山田光子さん親子

編み物サークルの渡邉嘉津江さんと山田光子さん親子

渡邉嘉津江さんは、母の山田光子さんと一緒に「いのちの木」に通っています。山田さんは認知症の症状がありグループホームに入居したものの、症状が軽度でとても元気。「グループホームの中で面会をするよりも、いのちの木に来て一緒に編み物をすることで、お互いが楽しみながら時間を過ごすことができる」と言います。

それぞれに状況は少しずつ異なるものの、編み物という共通の話題を語りながらいきいきとした時間を過ごすことができる。そんなコミュニティカフェ「いのちの木」の編み物サークルの活動がすこしずつ、編み手である女性たちに収入をもたらす仕事にもなってきているのです。

NPO法人「五つのパン」理事の岩永敏朗さんは、いのちの木の運営を通して、既存の社会福祉制度にあてはまらない市民の人たちが沢山いること、そして彼らも居場所や支援を必要としていることに気がつきます。それぞれに生きづらさを抱えた市民たちの居場所をつくり支援していくためには、お金の流れも人の流れも含めて新しい方法を考える必要があると言います。高齢者の技術や知恵を次の世代に繋げていくことをコンセプトに2011年12月にオープンしたいのちの木も、設立時こそ補助金を利用したものの、その後は助成なしでの運営となっています。しかし、運営資金は他の事業の売上から補填している状況もあり、いのちの木運営のための資金調達はまだ課題を抱えています。

いのちの木を運営する岩永敏朗さん

いのちの木を運営する岩永敏朗さん

座談会に参加した横浜市会議員の草間剛さんは、「横浜市は2019年の373万人をピークに人口減少に転じる。東京、名古屋、大阪と違い企業本社が少なく法人税収入の比率が低い横浜では、人口減による住民税の減少は市政の財源に大きな影響を及ぼし、社会福祉ニーズに対する補助金での対応がどんどん難しくなっていく状況にある。そういう状況もあり、ローカルグットヨコハマのクラウドファンディングは、新しい資金調達の方法として期待されている」と話しました。

また、参加者のケアマネージャーの方からは、現行の福祉施設で対応しきれない人たちがいて、そういう人たちを支えるいのちの木の存在意義は大きいと話していました。戸塚区で高齢者支援をされている方からは、いのちの木の「おばあちゃんの編み物会社」設立は参考にしたい取組みでもあり、他の地域で編み物をしている高齢者の方にとっても目標になるという声が聞かれました。

座談会に集まった応援者の方々

座談会に集まった応援者の方々

約2時間の座談会の中で、編み物サークルの女性たちと岩永さんは、楠さんの「ビヨンドザリーフ」を手本に、こんどは自分達のブランドを立ち上げることに取り組んでいくこと、その最初の一歩としてクラウドファンディングで集めた資金で最初の商品開発を行なうこと、お金だけでなく、商品開発のお手伝いをしてくれる仲間を募集していることを語りました。

会社設立という大きな試みに、いのちの木に集まる女性たちがいきいきとチャレンジしていることが感じられる座談会でした。

クラウドファンディングは、12月3日0時まで受け付けています。詳細は、『いのちの木「おばあちゃんの編み物会社」設立に向けた「商品開発」プロジェクト』ページまで。

 

 

ライター紹介

「LOCAL GOOD YOKOHAMA」は、 サービス、 モノ、 カネ、 ヒト、 情報の循環をつくっていくことを目指し、インターネット上の場と、インターネットを超えた地域の現場両面から、地域をよくする活動「地域のGOOD=ステキないいコト」に市民、企業が参加するきっかけをつくっていきます。活動に加わり、メンバーとして地域に関わっていくローカルグッドサポーター、プロボノを募集しています。

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