ローカルグッドニュース

地域に必要とされるビジネスを創る

横浜市内各区で、地域のキーパーソンから見えるまちの課題と取り組みを聞き、交流を深めるイベント「ローカルグッドカフェ」。青葉区たまプラーザ駅そばの「3丁目カフェ」(同区美しが丘1)で行われた「ローカルグッドカフェ in 3丁目カフェ」の後半レポートを掲載します。(前半レポートはこちら)。

「LOCAL GOOD YOKOHAMA」(ローカルグッドヨコハマ)では、横浜市全域、あちこちで「地域課題の解決」に取り組む人たち、イベントを情報として紹介していますが、ネットでの発信とともに重視しているのが「実際に会い、対話をすること」。「ローカルグッドカフェ」は、各区のコミュニティカフェなどに地域で活動しているキーパーソンが集まり、日ごろ感じている課題を共有したり、これからの展開について意見を交換したりと、気軽な雰囲気のなかでつながりをつくる目的で開催しています。

青葉区で開催された「ローカルグッドカフェ in 3丁目カフェ」は昼と夜の2部制で、たまプラーザ駅近くの「3丁目カフェ」で行われました。今、この周辺地域(美しが丘周辺)に大きなインパクトを与えているのが横浜市と東急電鉄が推進する「次世代郊外まちづくりプロジェクト」の「住民創発プロジェクト」です。 このプロジェクトを東急側で担当している東京急行電鉄株式会社都市開発事業本部長の東浦亮典さんは、「東急多摩田園都市」開発構想の公表から2013年で60周年が経過し、初期に移り住んだ住民の世代交代が進み、新たなまちづくりの機運と担い手を生みだしていく必要性に触れました。

「次世代郊外まちづくりプロジェクト」の「住民創発プロジェクト」を東急側で担当している東京急行電鉄都市開発事業本部長の東浦亮典さん

「次世代郊外まちづくりプロジェクト」の「住民創発プロジェクト」を東急側で担当している東京急行電鉄都市開発事業本部長の東浦亮典さん

「次世代郊外まちづくりプロジェクトを横浜市とともに実施しようと企画したのも、住民のつながりづくり・セーフティネットづくりに取り組み、高齢化が急速に進む地域での暮らしを持続可能にしていくには、産官学民の4者の連携が必須だという認識が関係者それぞれにあったから」と東浦さんは言います。 住民創発プロジェクトで目指しているのは、行政で担うことと、民間ビジネスで担うことの双方からこぼれてしまうような「地域での支え合いのしくみ」を持続可能にしていくこと。 無料ボランティアでも、利益追求のみが目的のビジネスでもない「コミュニティビジネス」の種を住民から募り、15の事業が採択されました。 これらの事業では初年度50万円の支援金を使うことができますが、次年度からはゼロ。地域の課題を解決することと採算をとっていくこと、熱いシビックプライド(郷土愛)とクールなマネジメントの双方が求められます。 第1部でスピーカーをした北原まどかさん、青葉フレンズの政野さん、3丁目カフェを企画した大野さんも「住民創発プロジェクト」として活動を展開しています。東浦さんは「青葉区のみなさんは、味方にすると、これほどすごい人たちはいません。市民と企業が、ともに活動するということでプロジェクトは勢い付いていくし、すばらしい町になっていくでしょう」と話しています。

「次世代郊外まちづくりプロジェクト」で盛り上がるたまプラーザ周辺ですが、独自に動き出している人たちもいます。ローカルグッドカフェ in 3丁目カフェ 夜の部に登壇したスピーカーのトップバッターは、地域とビジネスのかかわりをもっと深めていこうと活動しているNPO法人「協同労働協会OICHI(オイチ)」の坂佐井さん。 「OICHI」は、仲間と力を合わせ、協同で起業し、強みを生かし、弱みをカバーしあいながら社会に貢献できる仕事を創っていこうというミッションで活動するNPO法人です。2008年に任意団体として東京都内で活動を始め、NPO法人化を経て、2014年6月に地域密着型の起業支援拠点「まちなかbizあおば」(横浜市青葉区美しが丘1)を開設しました。 OICHIは、活動当初は主に都内でセミナーや勉強会を実施していました。経済活動活性化をはかるという趣旨で始めたため、特に「地域」について意識したことはありませんでした。 東京で働き、青葉区の自宅には「眠りに帰るだけ」だった坂佐井さんに変化をもたらしたのは、2011年3月11日の東日本大震災でした。帰宅難民になったことをきっかけに、初めて働き方を考え直し、地域に目を向けるようになったといいます。 さらに、自宅近くにあった小さな公園がなくなったことも「地域のことを知ろうとしなかった自分」に気づくきっかけになりました。横浜市から管理を受託していた地元自治会が高齢化などによって管理できなくなったため運営が困難になったことが後からわかりました。 今、その「元・公園」の土地は更地となり柵で囲われ、誰も入れないようになっています。「子どもと一緒に遊んでいた公園がある日突然なくなると聞いたが、もっと私自身が地域に対して積極的に関わろうとしませんでした。そういう自分にも問題があると思いました」。

起業支援センターまちなかbizあおばをたちあげた坂佐井さん。彼のまわりには地域の課題をビジネスの手法をつかって解決しようという意欲のある人々が集まっている。

起業支援センターまちなかbizあおばをたちあげた坂佐井さん。彼のまわりには地域の課題をビジネスの手法をつかって解決しようという意欲のある人々が集まっている。

まずは知り合いをつくるところから、と始めたのが「あざみ野ほろ酔い交流会」。お酒を飲みながら、知り合いが知り合いを呼び、つながっていく。青葉区のこと、仕事のことを語り合い、「眠りに帰る場所」がいつのまにか、たくさんの知り合いとあいさつができる町に変わっていきました。 こうして「地域」に関心を持って動き出した坂佐井さんが、さらに横浜というまちに関心を抱いたきっかけになったのが、横浜型の企業の社会的責任のかたちを広めているNPO法人「横浜スタンダード推進協議会」(江森克治理事長)との出会いです。同協議会は、横浜市の施策である「横浜型地域貢献企業」の運営・サポートをしており、年に1度「課題解決ダイアログ」と題した行政関係者と認定貢献企業の交流会を開催しています。 坂佐井さんはこの「ダイアログ」で、初めて行政の人たちの「生の声」を聞きました。子育て、障害者、まちづくり、防災、環境…。急速に進む少子高齢化、社会保障費の増大などで財政がひっ迫する将来についてはっきりと認識したといいます。そしてそのダイアログで語られた横浜の課題は、そのまま青葉区の課題でもありました。 「実際に地域に 住んでいるわたしたちが、その課題を知ることでビジネスを立ち上げ、起業家のリソースで解決していくやり方があるかもしれない」と考えて、青葉区に作った拠点が「起業支援センターまちなかbizあおば」でした。たまプラーザ駅前商店街通りの方々や、横浜市、青葉区の職員など地域の人たちのサポートを受けて6月に開設した拠点も、オープンから3カ月が経ち、現在約30人が在籍しています。 「LOCAL GOOD YOKOHAMAも、横浜の地域課題を見える化し、その課題を乗り越えようとしている人たちをつなぐ仕組み。わたしたちも連携し、青葉区から”地域課題をビジネスで解決できる”という動きを発信していきたい」と、坂佐井さんは意欲に燃えています。

続いて登壇したスピーカーは「まちなかBizあおば」に登録し、青葉区で「食」にかかわる仕事をしている株式会社「さくら工房」(横浜市青葉区市ケ尾町)の代表取締役、櫻井友子さん。安全で安心な食こそが、次世代のこどもたち・家族の幸せにつながるという信念と、女性のキャリア継続を支援したいという思いを開発する商品に込めています。 食の仕事に携わった原点は、自らのワーキングマザーとしての体験があるから。子育てだけを生き甲斐にするのでなく、子育ての経験を生かせるような仕事を考えた結果、「食」の分野でキャリアを積むことを選択したそうです。 櫻井さんが働きながらも決めたことは「息子、娘が成人するまで、毎食の食卓を自分の調理・料理で整えること」。

働く女性を食の分野、雇用の面からもサポートしている櫻井友子さん。これからは横浜の特産品を開発したいと話す。

働く女性を食の分野、雇用の面からもサポートしている櫻井友子さん。これからは横浜の特産品を開発したいと話す。

「これが私がぶれない軸だと思い、20数年間続けてきました。ただ、私は続けられましたが近くに実家もなく、頼る人が少ない首都圏のママたちがやるのは本当に大変だと思います」と、現在のワーキングママにかつての櫻井さんの「信念」を単純に重ねあわせることはしません。 負担の重さはわかっているので「どうしたら、楽に安全に、しかもおいしく食事作りをサポートできるのか」という「応援」の気持ちを仕事に込めて、「総菜そぼろ」というこれまでにない商品開発につなげました。鍋を使うこともなく、魚貝・肉・野菜・海草・豆などを手軽に取り入れることができる「助っ人食材」を、「オール女性社員」という体制で開発してきました。金・土・日の週末には、「起業支援センターまちなかbizあおば」で販売もしています。 ワーキングマザーとしての経験を生かした経営をしてきた櫻井さんが、東京・中目黒の店を整理し、「青葉区」を本拠地と定めて経営を始めたのは、この地域に数多くいる女性の可能性に着目したから。 青葉区は、東京で能力を生かして働いていたキャリアを持つ30代〜40代の女性が多い地域です。教育熱心で退職して子育てする女性も多いのですが、子どもが大きくなってもなかなか仕事に復帰できないことも。「保育園に預けること自体にふんぎりのつかない女性たちに、リハビリ的に働いてもらい、ゆっくりとやりがいあるキャリアについて考えてもらえたら」と、女性の雇用創造にも積極的に取り組む方針です。 これからやりたいのは神奈川・横浜の特産品作り。櫻井さんは「お母さんたちの力で、地元の食材をブランディングしながら神奈川・横浜の特産品をつくっていきたいですね」と、話しています。

3人目に登壇した スピーカーは、 株式会社ダスキン東横(横浜市青葉区)代表の松日楽(まつひら)正樹さん。松日楽さんは、分区前の緑区に生まれ、青葉区に育った地元人。先代の父親が1971年10月に設立した大手清掃業のフランチャイズ店を継ぎ、個人宅のクリーニング・家事代行サービス・植木の定期管理などの業務を展開しています。 人口減少著しい地方都市が多い中、フランチャイズチェーンのなかでもあざみ野店は「人口も増え、お客さまも増えている恵まれた地域」で営業を続けてきました。

自身のビジネスの現場を通して見つかった、地域のニーズについて語る株式会社ダスキン東横代表の松日楽正樹さん

自身のビジネスの現場を通して見つかった、地域のニーズについて語る株式会社ダスキン東横代表の松日楽正樹さん

青葉区は平均年齢では横浜市内で2番目に若い42.3歳ですが、高齢者数の伸び率は5.79%となっていて市内で1位。そのデータを裏打ちするように松日楽さんは「介護保険適用外の家事代行サービスのニーズがとても高い」と話します。 青葉区で仕事をして、育ってきた松日楽さんですが、実は仕事以外のつながりはほとんどなかったそう。もちろん清掃活動や募金などは実施していましたが「地域に根ざすといいながら、実際は同業者の集まりもほとんどが中区でしたし、地元の人とのコミュニケーションは稀薄でした」。坂佐井さんとの出会いが、青葉区で具体的に貢献する活動を提案し、実現するきっかけになったそうです。 今、課題に感じているのは高齢化が急速に進む青葉区で「仕事がいくらでもあるのに、募集を繰り返しても人材が集まらないこと」。毎週のように求人サイトに情報を載せても「首都圏版」に掲載されるだけで、応募者はほとんどいないそうです。「地域に根ざした求人情報があったらよいのですが」と、青葉区の仕事のニーズと仕事を求める人をつなぐ仕組みづくりに関心を持っています。

「ローカルグッドカフェ in 3丁目カフェ」の最後のスピーカーとなったのは中古車販売業を営む丹野快一さん。実は丹野さんが経営する「サクセスオート湘南」の本社は鎌倉市にあります。横浜市に本社がない会社がなぜ青葉区にどのような縁があるのでしょうか? 丹野さんは、坂佐井さんと同様にNPO法人「横浜スタンダード推進協議会」の活動を知り、「課題解決ダイアログ」で行政職員がデータをもって示した「税収が減少し、公的サービスが低下せざるを得ない」横浜の近未来の状況に驚きました。 その認識を持ちながら、本業である中古車販売を通じて実現したいビジョンを「循環型クルマ社会」と定め、その実現のために「発展途上国への中古車の輸出」「中古車を生かした女性向けレンタカー事業企画」「レンタルできる福祉車両」などのアイデア実現に向けて奔走してきました。

鎌倉を拠点に中古車販売「サクセスオート湘南」を営む丹野さん。「横浜スタンダード推進協議会」の活動から横浜の近未来について考えるようになり、まちなかbizあおばにも登録。青葉区から循環型自動車社会の動きをつくっていきたいと語る。

鎌倉を拠点に中古車販売「サクセスオート湘南」を営む丹野さん。「横浜スタンダード推進協議会」の活動から横浜の近未来について考えるようになり、まちなかbizあおばにも登録。青葉区から循環型自動車社会の動きをつくっていきたいと語る。

発展途上国への中古車輸出は、「新車購入後、13年経過すると自動車税がアップする」という仕組みのなかで乗れる自動車が中古車市場に集まるものの、だぶついてしまうためにスクラップとして廃棄されてしまう現状を変えようと発案されました。「まだまだ走ることができる日本の中古車」を、発展著しい南米やアフリ力の需要につなぐビジネスです。 また「車離れ」「福祉車両の普及」について、中古車を活用してターゲットである女性や在宅で家族を介護している人たちに必要とされる新事業を立ち上げる方針です。「いずれの事業も、本業の自動車販売を持続させつつ、どのように社会に貢献できるのかを考えて進めてきた企画です。(横浜スタンダード推進協議会で)地域のことをやろうと言っているのだから、まず自分から踏みだそうと思いました」と丹野さん。 鎌倉から青葉区の活動に参加しているのも、志を同じくしている仲間たちとともに「第2の創業」である新たなプロジェクトを進めたかったから。「青葉区(まちなかbizあおば)に支店登記をして、この地域から循環型自動車社会の動きをつくっていきたい」。 行政の枠組みにこだわらず、丹野さんはフットワーク軽くアクションを積み重ね、ネットワークを広げています。

昼の部、夜の部に登壇した8人のほかにも、ローカルグッドカフェ in 3丁目カフェには「地域のイベントに初めて来てみました。」と緊張しながら話す現役サラリーマンの男性や学生、子どもを連れたお母さん、看護師など多様な属性の方々が参加されました。いずれのみなさんも「青葉の人と、青葉をハッピーにするためにできることをやりたい」と、素直に思い、動き出そうとしている人たちばかり。今後も それぞれのまちで、奮闘するみなさんのストーリーを共有し相互に力づけられる貴重な時間をもつことをめざし、ローカルグッドカフェは市内のさまざまな場所で展開していきますが、その記念すべき第1回にふさわしい、エネルギーに満ちた1日となりました。

 

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ライター紹介

「LOCAL GOOD YOKOHAMA」は、 サービス、 モノ、 カネ、 ヒト、 情報の循環をつくっていくことを目指し、インターネット上の場と、インターネットを超えた地域の現場両面から、地域をよくする活動「地域のGOOD=ステキないいコト」に市民、企業が参加するきっかけをつくっていきます。活動に加わり、メンバーとして地域に関わっていくローカルグッドサポーター、プロボノを募集しています。

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