ローカルグッドニュース

多世代交流空間「COCOしのはら」の原点は、先輩への恩返しと支え手の循環

横浜市港北区を中心に「地域で共に育ち合う子育て環境づくり」を目指して活動中のNPO法人「びーのびーの」(神奈川県横浜市港北区篠原北1)が、創業18年目を迎えた2017年4月27日、子どもから高齢者まで多世代が気軽に立ち寄れる地域福祉交流スペース『COCOしのはら』(横浜市港北区篠原町1077)を開所しました。当事者の声を生かした子育て環境づくりを推進してきた同法人が、高齢者も対象に含めた多世代向けスペースを開所した理由や背景について、同法人の理事長・奥山千鶴子さんにお話をうかがいました。

 

同法人は、2000年4月に横浜市親と子のつどいの広場事業「おやこの広場 びーのびーの」(横浜市港北区篠原北1)を開所して以来、行政と協働したり、独自に企画したりしながら、一貫して当事者の声を生かした子育て支援事業を展開してきました。

COCOしのはら のメインアプローチ、改修計画から完成まで、スタッフや住民の皆さんとの手で完成

「COCOしのはら」のメインアプローチの改修は、これまでのご縁で培った周辺住民の皆さんとの協業によって完成

横浜市北部で子育てをしてきた人ならば、今や同エリアの幼稚園・保育園探しの「バイブル」といっても過言ではない「びーのびーの 幼稚園+保育園ガイド」の発行元として知る人も多いのではないでしょうか。

「子育て」を軸に事業を続けてきたびーのびーのが「高齢者とともに過ごせる拠点を作ろう」と、自主事業としてチャレンジしたのが『COCOしのはら』でした。

横浜市営地下鉄・岸根公園駅から徒歩3分の閑静な住宅街にある一軒家を再生してできたこの空間は、これまで同社が培ってきた町内会との連携など、信頼関係を踏まえた紹介からスタートしたそうです。

木造平屋建て、92㎡。3ヶ月間をかけ、延べ30人のボランティアが関わり、地域のみんなが立ち寄れる居場所を造りました。

 

 

□先輩世代への「恩返し」

NPO法人びーのびーの 理事長 奥山千鶴子さん

「COCOしのはら」多目的室にて、立上げの想いなどをお話し頂いた NPO法人びーのびーの 理事長 奥山千鶴子さん

「びーのびーのが進めてきた子育て環境づくりは、その開設当初から、周辺地域に住むシニア世代や学生ボランティアの支援なしでは成立しませんでした」と奥山さんは振り返ります。それは「びーのびーの」に通う親子だけでなく、子育ての真っ最中だった同法人スタッフについても同じだったそうです。

「私たちの事業が始まって18年目。開設当初に支援してくださった周辺地域の先輩世代は、おそらく今、70代後半から80代前半にさしかかっています。『あの頃のご恩返しを』という思いをずっと持ち続けてきた私たちにとって、高齢者支援にまなざしが向かうのは、自然なことでした」と、奥山さんは「多世代」を意識した場を開設した理由を明快に語ります。

さらにスタッフからは「年を取ったときに『自分が行きたい』と思える場所にしよう」という意見も出たそうです。「これは非常に良い言葉だし、重たい言葉だと感じています。自分たちが行きたくなるような場所をイメージして、『COCOしのはら』をつくりました」。

「先輩世代への恩返し」に加え、「広いお庭の一軒家で、世代を問わず、誰もがフラッと立ち寄れ、自由に過ごせる場をつくりたい」という、びーのびーの運営メンバーの思いも、多世代交流を目的とした複合用途スペース:『COCOしのはら』実現の原動力でした。

 

□子育てと高齢者、2つの支援を融合

「一軒家」と「世代を問わず」という部分を除けば、同法人が最初に設立した「びーのびーの」と似た雰囲気です。「この17年でさまざまなセクターと連携しながら実現してきた区内の『子育てひろば』事業も8箇所になりました。これは、港北区内に9つある公立中学校に近い数です」と、奥山さん。子育て中の親子を孤独にしないために「身近につながる場が必要」という思いで取り組んできた成果です。

そして実は、港北区内の地域ケアプラザと、同区内の公立中学校は同数だそうです。起伏に富んだ港北区の地形と、子育て世代と高齢者の体力差・移動可能な距離の差を考えれば、高齢者が立ち寄れる拠点は「公立小学校の数くらい必要ではないか」という認識を、びーのびーのスタッフと地域ケアプラザ関係者も相互に持っていたそうです。「地域ケアプラザからのご支援もいただきながら、子育て支援と高齢者支援が融合できるようなスペースを展開できればと思っています。」と奥山さんは話しています。

 

□目指すは「地域内での支え手の循環」

びーのびーの利用者から始まって、今般、「COCOしのはら」で代表を務める斎藤靖子さん

最初はびーのびーの利用者で、今「COCOしのはら」代表の斎藤靖子さん。正に「地域の支え手の循環」を体現する方。

こうしたコンセプトを踏まえ、毎週水曜日の午前中に、高齢者を対象に体操や健康講座などを行う「COCOのびのび」が開催されています。 この健康講座について、『COCOしのはら』代表の斎藤靖子さんは「篠原地域ケアプラザなど高齢者福祉に精通された方々の協力を仰ぎ、しっかり介護予防に役立つ講座などを提供していきたいと思います」と、すでに地域にある人材やスキルを活用しながらより身近な場所で健康を維持する機会を提供しています。

「COCOのびのび」のプログラムがない火・木・金曜日の午前中には、幼稚園・保育園入園前の幼児を対象としたグループ保育・預かり保育「まんまーる篠原」を運営しています。

また、午後は、地域住民自らが講師になって実施する「自主企画講座」や「ワンCOイン講座」、あるいはサークル活動の時間帯に設定されています。開所後間もないにもかかわらず、既に数件の講座が立ち上がりそうだとか。

『COCOしのはら』の特徴の1つとして、この「まんまーる篠原」の開業中、隣の居間では、午前は1ドリンク制の「交流カフェ」、昼食時間帯は軽食を楽しめる「ごちそうさん食堂」が並行して開業しています。まさに子どもから高齢者まで一緒にくつろげる「続き間」が、昭和生まれの一軒家で展開されています。

こうしたつながりは、17年をかけてびーのびーのが町内会や地域住民とコミュニケーションを重ね、さまざまなイベントや事業を支援したり・されたりする関係をきにサポート頂き、あるいは築き上げてきた縁から生まれています。「私たちが『イベントをやるから来てください』とお願いする前に、地域の皆さん主催のお祭りやイベントに、びーのびーのが参加することが先。“地域あっての場”という意識はいつもあります」と斎藤さんは言います。『COCOしのはら』もこれまで同様「地域住民主体になるようにしていきたい」と、軸ははっきりしています。

「COCOしのはら」中央にある、高い天井の食堂兼交流スペース。昔の一軒家らしく、広い庭との連続性が感じられる空間。

「COCOしのはら」中央にある天井が高い居間。一軒家らしく、広い庭との連続性が感じられる食堂兼交流スペース。

多世代交流スペースだからこそ、誰でも来られる雰囲気づくりに配慮しているそうです。特に、初めて来所する人への気づかい、男性も来やすい環境づくりなどが重要だと考えています。奥山さんは「『びーのびーの』や『どろっぷ』運営で、私たちがずっと意識してきた対応と変わりません。ここでも引き続き、色んな人たちの関わりを大切にするような『同質性の緩和』には注力したいですね」と、子育て支援事業と変わらぬ姿勢で多様な人たちを迎え入れていきます。

身近な「福祉と交流の場」として開所した『COCOしのはら』を通して、びーのびーのが実現したいことは何でしょう?

奥山さんは「私たちNPO法人は『地域の次の課題にチャレンジしていく』役割を担っています。このスペースを通じて、子育てを支えていただいたシニア世代の方々を、子育てがひと段落した私たちが支える『地域内での支え手の循環』を広げていきたいですね」と、新たな場を通して実現したい未来を見据えています。

(聞き手・LOCAL GOOD YOKOHAMA ライター/井上豊隆)

 

▶︎COCOしのはら

http://www.bi-no.org/shinohara.html

住所:〒223–0026 横浜市港北区篠原町1077

電話番号:045–716–9875

営業時間:月~金 各曜日とも 9:30〜15:30 (交流カフェ:10:00〜15:00、 ごちそうさん食堂:11:30〜13:00)

▶︎NPO法人びーのびーの

http://www.bi-no.org/

2000年、港北区の母たちが集まり「在宅で子育てする親子が集える場が必要」と東横線菊名駅そば、菊名西口商店街の空き店舗に「居場所」を開設したことが始まり。同年NPO法人も設立。以後、当事者の声を生かしながら港北区地域子育て支援拠点委託事業の『どろっぷ』(同区大倉山3)、『どろっぷサテライト』(同区綱島東3)、小規模保育事業の『ちいさなたね保育園』(同区師岡町824)、預り保育事業の『まんまーる』(同区大倉山3)と、様々なセクターと連携しながら次々に地域の子育て支援拠点を開設・運営している。

ライター紹介

1971年生。大阪市出身。港北区在住。2015年から「地域資源を使ったおもしろ体験」による多世代交流を促す「おやともの会」の運営に参画。2016年「小市民向けオフグリッド」がテーマの太陽光発電所「おいちゃん電力」開設。地域共助や空家対策に関心。宅地建物取引士/一級建築士/JFA サッカー4級審判員

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