ローカルグッドプレイヤー

「世のため人のため」に仕事がしたい~オーガニックコットンで東北支援も

環境に優しいオーガニックの重要性にいち早く注目し、オーガニックコットン製品の企画製造に取り組んできた「新藤」代表取締役社長の藤澤徹さん。「天衣無縫」のブランド名で東京・横浜の店舗とネットショップを事業展開しています。社長の生き方そのものがCSR、モノではなく「オーガニック」という理念を広めたい、「次元の違う価値を作り上げたい」と語る藤澤さんに今に至るまでのお話をお聞きしました。

社会に必要とされる仕事がしたい

-CSRについてどのようにお考えですか

CSRは特殊なものではないと考えています。企業として事業をやるときに、仕事そのものが社会に必要とされるというのは必要条件の一つだと思うからです。
私の家は、和装小物の卸業をやっていましたが、私が中学のときと大学卒業後に2度の倒産を経験しました。和装品がライフスタイルにあわなくなってきていると思い、業務転換を考え、オーガニックコットンへと舵を切りました。もともと教育を学ぼうと東北大にすすんでいましたが、時代は学生運動ベトナム反戦運動などが盛んで、世のため人のために活動したいという気持ちを育てるのには十分でした。稼がなきゃならないのなら、自分の志すことを仕事にしたいと思ったのです。栽培支援するだけで地球環境の改善活動になるオーガニックコットンと出会い、1993年から企画製造に取り組み始めました。

-事業は順調にいきましたか

CSR-4それが、まったくうまくいかなかったのです。当時はオーガニックという言葉も知られておらず、当然のようにマーケットがありませんでした。資金の乏しい中1000万円を投資したのですが、全くといっていいほど売れなかったのです。しかし「やらなければいけない」という使命感が根底にあり続けてきました。その後、バブルがはじけ、大量生産・大量消費の時代が終わり、環境破壊がクローズアップされる時代が訪れて、消費者が「環境」に目を向ける時代が到来しました。そんな中、大手百貨店に出店も決まり、急速に商品が売れ始めました。それから20年、マーケットは当初の200倍ほどに大きくなり、オーガニックという言葉も一般化し、いまでは大手企業も取り組み始めるほどになりました。

-オーガニックコットンに注目したのはどうしてですか

一般的に、綿花は市場価格が安く、大量に生産しないと割が合わないため、栽培は効率化された大規模農場で行われています。アメリカでは綿花生産の際、大量に「枯葉剤」が使われています。当然環境破壊が進み、農業者の体にも影響が出ています。自然を破壊する農業なのです。そんな中、アメリカでオーガニックコットンに取り組む農場を訪問し、これだと思いました。

CSR6-3オーガニックコットンとは、3年以上化学肥料や農薬を使用していない農地で有機肥料を用い、天敵の益虫で害虫駆除を行うなどして、自然の生態系に負荷を与えず、働く人の健康に配慮した農場で育てられたコットンです。オーガニックコットンを普及させ綿花が高く取引されるようになれば、貧困や農薬からくる健康被害、環境の汚染などを防ぐことが出来ます。オーガニックコットンの商品を日本で作り、日本で販売することによって、オーガニックに取り組む農場の取り組みを応援すべきだ、これをライフワークにしようと思いました。

-オーガニックコットンはどれくらい栽培されているものなのですか

世界全体のオーガニックコットンの生産量は約11万トン。綿花全体の生産量は約2550万トンですので、比率は0.43%で、まだまだきわめて希少なものです(*1)。

-オーガニックコットンと通常の綿花の違いはありますか

実際のところ、オーガニックコットンのタオルとそうでないタオルとを目をつぶって比べるとあてられません。じゃあ、何が魅力なのかというと、中身やプロセスといった物語が大切なのです。ものを売るのではなく、オーガニックが持っているストーリーや人となりを売るのだと考えています。

 

震災復興支援「東北コットンプロジェクト」から日本綿花の復活を

-参加されている東北コットンプロジェクトについて教えて下さい

CSR6-2東日本大震災で何か自分に出来ることはないかと考え、5年目を迎える取り組みです。津波の影響で塩分濃度が上がり、稲作が出来なくなった土地で、耐塩性が高い綿花栽培をすすめ、被災農家の農業再開を後押しします。いまやアパレルブランドなど60社以上が参加していて、収穫した綿花は市場価格より高い価格で全量買い取り「東北コットンプロジェクト製品」として商品化します。消費者が商品購入を通して、被災地支援が出来るという仕組みです。

-日本での綿花栽培状況はどうなのでしょうか

日本の綿の生産は、いまはかぎりなくゼロです。量は少なくても綿花生産を東北に根付かせ、顔の見える関係で新たな事業モデルをつくりことが重要だと思っています。農業-工業-商業-消費者とつながり、新しい産業を作り上げられるチャンスだと思っています。
このプロジェクトのことを聞いた、島根県の農家から「元々生産されていた綿花栽培を再開させたい」と連絡があり、「奥出雲コットンプロジェクト」につながりました。
いま、実は、横浜でも実験農場を設ける話が動いています。
綿花は1キロ200円と安値で取引されているので、大量生産してさらに人件費もけずって生産されているのが現状で、日本では生産性があわないのです。それでも、国内生産の綿花を復活させて農業-工業-商業のすべての行程を顔の見える関係で構築しブランドとしていくことを考えています。

東北コットンプロジェクト

http://www.tohokucotton.com/

 

「オーガニック」を生き方にまで広げる

-今後のビジョンをどう考えていますか

CSR6-1社員全員がより良い生活を実現し働きがいと誇りの持てる職場を作ること、オーガニックビジネスの質的ナンバーワン企業となること、神奈川県でオーガニックコットンを生産すること、オーガニックな衣食住の総合ショップを立ち上げることを考えています。「オーガニック」ということを消費の対象物にとどめず、人、人の関係、生き方まで広げて考えるというのがビジョンです。
私たちはモノを売っているのではなく、「オーガニック」という理念を売っているのです。繊維関係を軸に、これを衣食住にまで広げていきたい。たとえば、国産有機食材のおいしいレストランなども構想しています。つながりの中でビジネスのイメージができていきます。
「CSR」の意味が「企業の社会的責任」であり、それが社会貢献と自社の存続繁栄を一体的にすすめることであるとすれば「中小企業のCSR戦略」とは、社長の生きざまそのものであり、社員の生き方である、と考えます。私たちは日々やっていることが社会貢献なのです。本気でやることです。本気でやれば、世の中がほっておかないでしょう。

*1 2013年Textile Exchange調べ

<企業プロフィール>

株式会社新藤
代表取締役 藤澤徹さん
住所 神奈川県横浜市南区永田東 2-11-34
業種 オーガニックタオルなどの企画・製造・販売、各種ブランドのOEM生産
URL  http://www.tenimuhou.jp/

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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