ローカルグッドプレイヤー

人を大切にするDNA~関わった人たちをどうやって幸せにするか

野毛印刷社(横浜市中区相生町5)は1948年、横浜市中区野毛に創業しました。1995年には中小企業庁より中小企業合理化モデル工場の指定を受け、2000年にはISO9001品質管理のマネジメントシステム認証を取得するなど、常に高いレベルでの品質管理や顧客サービスに取組んでいます。また、CSR活動にも積極的に取り組み、自社リソースを活用した商品開発から「大地震対応マニュアル」など社会に役立つ商品を生み出しています。 今回は、受託産業である印刷業を生業としながら、人のために役立つ自社商品の開発に積極的に取り組む野毛印刷社の代表取締役社長の森下治さんに、CSRの取り組みについてお話しをお聞きしました。

-CSRという言葉を意識されるようになったのは、いつ頃からですか

印刷業は受注産業なので、いかにお客様の役に立つか、印刷物という手段を通して応えていくかということを常に考えているということがベースにあります。また、野毛印刷社には「人をいかに大切にしていくか」というDNAが昔からありました。そういったことが、お話しできるような活動になってきたのが、2004年に発売した「学生生活GUIDE」や2008年に作った「大地震対応マニュアル」の頃です。

daijishin_manual「学生生活GUIDE」は、大学生の学生生活における金銭や飲酒、薬物などのトラブル防止や防犯対策を目的としたガイドブックで、学生たちがそういったトラブルに巻き込まれないようにするために、印刷業としてできることをと考えて作った商品でした。その流れの中で、関西のある企業から、阪神淡路大震災後に社内向けに地震対応マニュアルを作られたと聞き、これを広く世に広めたいと思い、独自に編集し制作したのがポケットマニュアル「大地震対応マニュアル」でした。これが大きなきっかけだったと思います。

同じ頃、環境問題への感心の高まりから水なし印刷に取組むようになりました。また、印刷物はコミュニケーションツールでもあるありますので、MUD(メディア・ユニバーサル・デザイン)という、いわゆる情報のユニバーサルデザインも合わせて取組んでいます。

我々の仕事を通して、関わった人たちをどうやって幸せにするかっていうことがベースにあり、気障な言い方かもしれませんが突き詰めていくと「愛」という言葉が出てきます。仕事を通じてこれを伝えていくことと、自分たちがもっと広く社会に貢献できることを模索したいという思いがあり、横浜型地域貢献企業の制度ができた翌年の2009年に認定を受けました。審査を受けたことは、今までやってきたことがいわゆるCSRの基準に照らし合わせたときにどう見えるのかを確認するという意味合いがありました。

-人を大切にするDNAとはどういうことですか

社員もパートの人もパートナーとして大切にすることを考えて経営してきました。何十年も前の話ですが、ある社員から「自分達が幸せを感じていないのに、お客さまを幸せになんかできるわけがない」と言われたことがありました。それは本当にその通りで、社員が満足感を感じられないと、お客さまに満足してもらうことができないと思いました。

人が最終的にモノを買ったり判断したりするときには、目の前の人を信じられるかがとても重要で、その人の考えが感じられたときに心が動くと思っています。では、CSR活動とは何かというと、我々の本業の中で日常的に何を考えてどういうことをやっているかということの延長に結果としてCSRがあるという形にしたいと思っています。CSRは本業と切り離して考えることはできません。日本の商売のベースの中には、実はずっと前からある考え方だと思っています。オリンピック招致の時に「おもてなし」という言葉が注目されましたが、それは突然出てきたわけではなく、日本には昔からあったわけです。それに触れたときに、心が動くのだと思います。

サービスは要求に応えることだとすると、おもてなしは察して動くことだと思います。相手の思っていることをプレゼンするのではなく「そうなのだよ、それが欲しかったんだよ」ということを提案したい。それができる人が集まるともの凄く楽しくなると思っています。

-社員の方からCSRや社会貢献についての提案は生まれてきていますか

それは生まれてきています。例えば、私自身が10数年前から会社の前の道路の清掃をしています。そのうち一緒にやる人が増えて、今では横浜市道路局が主体となって進めている「ハマロード・サポーター<道路の里親制度>」として毎週水曜日に清掃を行うようになりました。そうしたら、今度は社員から阪東橋公園内を掃除しましょうという提案があり、毎週月曜日の朝に営業部のメンバーが外出前に清掃を行っています。

ビジネスの新しいアイデアとしては、耳の不自由な方や目の不自由の方に使えるようなコミュニケーションボードを作ろうという動きが出てきています。キーワードとしては、世の中で困っていることに対して、自社でどんなことが出来るのかということがあります。 まずは、社長が頑張らないといけない。そして、自分の後ろ姿を社員にどう見せるのかということを考えています。そうすると、自分の後ろのレールに新しい電車が乗ってきて、それが勝手に走り始めるようなイメージです。

-今後取り組んで行きたいと思うことはありますか

横浜型地域貢献企業を目指している企業の方が求めているものは何でしょうか。売上が伸びることも大事な要素ですが、本物の地域貢献を続けていくにはどうすれば良いのかという迷いがあるように感じています。そこで、その先を目指すとどういう形になっているのか、企業が地域企業として成長する要素はどういうことなのかといったことを、動画を使って広く伝えることはできないかと考えています。

今後、既に横浜型地域貢献企業に認定された企業の活動事例を、動画で紹介していきたいと思っています。紹介して行く中で見えてくる地域における社会的な課題を位置づけて、新たな課題を共有したいと考えています。それが見えるようになっていて横浜の企業がお互い刺激しあうような環境を作っていきたと考えています。

<企業プロフィール >

株式会社野毛印刷社
代表取締役社長 森下治
住所 横浜市南区新川町1-2
業種 印刷業
URL http://www.noge.co.jp/

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp 

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