ローカルグッドプレイヤー

コトづくりからまちづくりを コトラボ合同会社代表 岡部友彦さん

※この記事は、NPO法人アクションポート横浜が実施している「NPOインターンシップ」に参加した大学生が取材と執筆を担当しています。この事業は、社会課題を解決する組織(NPO)の一員として、学生の成長と地域貢献に向き合うプログラムです。

コトラボ合同会社(横浜市中区松影町3)の代表・岡部友彦さんは建築家ですが、会社設立前だった2004年から、横浜市中区にある「寿町地区」を拠点に、モノ(建物)づくりではなく「コトづくりからまちづくりを考える」プロジェクトを始めました。その後、2007年に会社を設立。現在では、空き部屋を有効活用した国内外のツーリスト向け安宿事業「ヨコハマホステルヴィレッジ」をはじめとして、愛媛県松山市三津浜地区の地域活性化事業、レンタルスペース「カドベヤ」やシェアハウス兼シェアカフェ「ブラフテラス」の運営など幅広いまちづくり事業を展開しています。

 その中でも今回は、かつて日雇い労働者向けの簡易宿泊所が立ち並んでいた日本3大ドヤ街の1つ横浜市寿町を拠点として展開している「ヨコハマホステルヴィレッジ」の活動に焦点を当て、お話を聞きしました。

ーまず、コトラボ合同会社設立の経緯を教えて下さい。

 大学院時代、都市様相を学びました。1つの視点のみでまちをとらえてしまうと危ない。なぜなら、まちには色々な考え方、多様な視点の人たちが暮らし、働いています。そうした現実をみないで、同じ1つの方向でまちづくりをするのは無理があります。

ヨコハマホステルビレッジは、世界中から旅人がやって来る。ロビーはその交流の場としていつもにぎわっている。

ヨコハマホステルビレッジは、世界中から旅人がやって来る。ロビーはその交流の場としていつもにぎわっている。

 コトラボでは、対象となるまちの1歩外に自分たちが立つようにし、そこで起こっていることを俯瞰(ふかん)しながら眺め、その中で自分たちができることを行っています。

 まちを形成する際、スクラップアンドビルド方式だと似通ったまちしか生まれてきません。まちづくりを「積み重ね」だととらえ、ここ(寿町)はここなりの「ここにしかない特色」を生かすべきだと考えて事業を作ってきました。

−寿町との出会いは「緑化がきっかけだ」とのこと。緑化から現在のコトラボの事業はどのようにつながり、展開していったのでしょうか。

 2004年当時、友人たちと共に「はしけ」を利用した緑化に取り組もうと考えました。「はしけ」上で、微生物菌を活用し、生ごみを堆肥に変えるとともに、そのプロセスで生成される液体の水質改善効果を利用して、中村川などをきれいにしようとする試みです。堆肥の上に緑を育てれば「観光スポットとしても話題を集める」という構想です。

 ヨコハマトリエンナーレ・スピンオフ企画である「市民公募プロジェクト」で、この企画を発表したところ「寿町でも、NPOが緑化に取り組んでいる」と聞いて、足を運んだのがこのまちとの出会いです。

−なぜ寿町で最初に始めた事業がホステルだったのでしょうか?

 2004年当時、このまちには空き部屋が多く存在し、オーナーさんも困っていました。「何か良い解決策はないか?」と私たちに相談が舞い込んできたことがきっかけです。同時期に、寿町と同じ「日本3大ドヤ街」の1つである東京の山谷(台東区清川・日本堤・橋場と荒川区南千住にまたがる地域)で日雇い向けの簡易宿泊所からツーリスト向けの宿泊所へと転換する動きが出ていました。そこで寿町でも宿をやってみようと考えました。

−宿を運営すること自体にもともと興味があったのですか?

  いえ、興味はありませんでした(笑)。ただ、このまちで宿泊業ができたら面白いのではないかと考えていました。しかし、今ではさまざまな出会いが生まれてここが自分の居場所のようなものになっています。

−活動内容はソーシャルビジネスだと例えられる事が多いと思いますが、ソーシャルビジネスについてはどうお考えですか?

 僕はソーシャルビジネスという言葉自体がおかしいのではないかと感じています。元来、「会社は、社会をより良くするための社会活動をする場」であったにもかかわらず、現在では「お金を稼ぐ」目的が先行してしまい、マネーゲームでも「利益を得られればいい」という状況になってしまっています。

 会社が「社会をより良くするための活動をする場」という側面より「お金を稼ぐこと」ことに主眼を置きすぎたために、もともと存在しなかった余計な社会的課題が生まれてきてしまったように思います。会社は「社会をより良くするための社会活動をする場」という共通の意識を大前提として持ち、「その活動の価値に対して、お金が払われる」と意識が変われば、ソーシャルビジネスという言葉は必要なくなると考えます。

−大学などでも教鞭をとっているとのことですが、これから将来を担う学生にメッセージをお願いします。

 このジャンル(NPO・まちづくり)ってやりたくても、将来に不安を感じることが大きく、就職活動の際、進路として考えられる状況にはなっていません。まず、まちづくり自体にしっかりとした後ろ盾のあるアカデミックなジャンルがないことも問題かもしれません。

 また、NPOの活動もそうですが、自分が興味を持つ分野・活動と合致する会社がないからといって、その時点で諦めるのではなく「自分で動いてほしい」と感じます。

将来の選択肢として就職しか考えていない学生が大多数でしょう。ただ、背負っているリスクが少なく時間がある学生のうちにトライアンドエラーでも構わないから、1度でも自分の関心を軸に動いて、実際に実現するためのプロジェクトをやってみたら良いのではないでしょうか。

【取材】飯塚るな(横浜市立大学・国際総合科学部)、山本幸(横浜市立大学・国際総合科学部)、久保木さやか(横浜市立大学・国際総合科学部)、髙山日伽里(横浜市立大学・国際総合科学部)、樋口陽之(横浜市立大学・国際総合科学部)、萩原彩香(明治学院大学・社会学部)

編集後記】横浜市立大学 久保木 さやか

現在大学2年、就職活動を控えている私にとっては『自分が興味を持つ分野・活動と合致する会社がないからといって、その時点で諦めるのではなく「自分で動いてほしい」』という最後のメッセージが心に刺さった。私自身も大学卒業後の進路として「就職する」イメージがとても大きい。完全に他人に流されてしまっているとも感じるが、社会的にそうする人が大多数だからということも大きな要因かもしれない。大多数の仲間に入れば同時に安心感が得られるし、きっと居心地も良い。しかし、それは本当に心の底から自分が望んでいることなのだろうかと考えさせられた。就職という言葉に含まれる「就」という文字。この文字を中国語辞典で調べてみると「合わせる、適応させる」といった意味の動詞としても使用されるそうだ。就職後は自ら就職先に「合わせにいっている、適応させにいっている」との解釈もできる。

就職活動をする際、一見、自らの将来を自らの手でつかみ取る行為をしているようであるが実は予め決められた狭い枠の中でしか自分の将来を描けていないのかもしれない。そして就職は人生の中で選択肢の1つであって、必ずしも就職を選ばなくてもよいのだと感じることができた。

ライター紹介

「LOCAL GOOD YOKOHAMA」は、 サービス、 モノ、 カネ、 ヒト、 情報の循環をつくっていくことを目指し、インターネット上の場と、インターネットを超えた地域の現場両面から、地域をよくする活動「地域のGOOD=ステキないいコト」に市民、企業が参加するきっかけをつくっていきます。活動に加わり、メンバーとして地域に関わっていくローカルグッドサポーター、プロボノを募集しています。

人/団体一覧へ戻る