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「いつでもどこでも演劇を楽しめる横浜」を次世代につなぐ「演劇資料室」(横浜市西区) 1930年代の資料も公開

演劇資料館のボランティアの方々

横浜には多くの大小さまざまな劇場があり、多くの劇団が存在します。学生演劇やアマチュア、プロなどの演劇に触れたことがある人も多いのではないでしょうか。「演劇が地域にどのように関わり合い、どのような役割を果たすことができるのか」という関心から、演劇の普及活動や貴重な資料の保管・公開をしている演劇資料室(横浜市西区紅葉ヶ丘)を訪ね、同資料室ボランティアスタッフの荒井賢一さんにこの施設について、演劇資料室の活動、これからの課題を聞きました。
(ライター=横浜市立大学2年・上鹿渡 大希)

この演劇資料室は、1952年から2013年にかけ、60年以上にわたり国内外のアマチュア劇団の調査、資料収集を続けた社団法人「横浜演劇研究所」(2013年に法人解散)が所有していた数千点の資料を広く公開し、市民により演劇に親しくなってもらうという目的のもとで活動しています。

同資料室は「演劇の世界をより多くに人たち知ってほしい」という理由から、閲覧者が自由に本を利用出来る開架式の書架になっています。閲覧が自由にできるので、著名な作家の知られざる作品や、独創性の高い先達の脚本などが、現在演劇に関わっている市民に直接知ってもらえる環境となっています。

演劇好きにはたまらない空間

演劇資料室中央には大きな机があります。訪れた人たちは、この机で図書の閲覧や、利用者同士の交流をすることができます。机を囲むように所狭しと演劇に関する図書が置かれています。壁には貴重な演劇ポスターが飾られていて、演劇好きにはたまらない空間です。

部屋面積は77平方メートル、閲覧席は18席あります。図書は約7000冊、雑誌は約6000冊を所蔵し、最新のものから中には1930年代のものまでテーマや時代など幅広く収集された資料が保存されています。図書の多くは貸出可能で、利用登録をするとどなたでも図書を貸し出してくれます。

これらの貴重な本を求め、横浜・神奈川だけでなく、東京をはじめ全国からの利用者がいるそうです。演劇資料室は、常に新しい図書や雑誌を収集していますが、その多くは著者や市民からの寄贈によるものが多いです。実際に2016年度に受け入れした図書148冊のうち、著者寄贈が80冊、個人・団体からの寄贈は28冊でした。

このデータを見てもわかるように演劇資料室は市民に愛されている施設です。「大学や図書館と違い、全国の人が利用出来るこの演劇資料室はより開かれた、より使いやすい施設にしたい」と荒井さんは話していました。

2005 年からボランティア13人で運営

演劇資料室では現在13人のボランティアが交代で働いています。取材時も荒井さんをはじめとする3人のボランティアの方が働いていました。

荒井さんは10代から横浜演劇研究所に所属していました。この研究所は「演劇の日常化」を目標に「横浜市民がいつでもどこでも演劇活動を行い、演劇を楽しむことができるような社会をつくりたい」という目標を持ち、活動を展開していました。

演劇資料の収集もその一環でした。「集めた資料を、広く市民に活用してほしい」と、2005年に県立青少年センターに演劇資料室が設けられました。

図書・パンフレット・雑誌が大量にあるため、所蔵スペースが確保できず、それまで場所を転々としていました。2002年に神奈川の演劇文化の拠点の1つである神奈川県立青少年センター再開発と同時にスペースを設けてもらえることになり、ようやく「安住の地」が決まりました。

青少年センターに演劇資料を移す条件として神奈川県は「県の職員は配置しない」「資料室は完全無償のボランティアが運営する」という2点を設けました。このため、現在演劇資料室運営には13人のボランティアが交代で関わっています。

課題は「高齢化と資金調達」

演劇に興味のある人や演劇関係者の交流の場となっている演劇資料室ですが、荒井さんは特に次に3つの課題を挙げました。まず1つ目は「ボランティアの高齢化」です。
先ほどご紹介した通り演劇資料室のスタッフ13 人のうち60代が5人、70代が4人です。荒井さんは「後世にこの資料を残すためには若い人の力が不可欠です。少しでも関心があれば気軽に、できるところから活動にかかわってもらえたら」と話しています。

課題の2つ目は運営資金の確保です。多くの資料を保存したり、最新の資料を取り寄せたりするためには少なからずお金がかかります。3点目として荒井さんは「資料保管のためにもう少しスペースがあれば」と、資料の充実とスペースの確保を両立させることの難しさについて言及していました。

こうした課題がありながらも「演劇資料室を訪れたみなさんに、演劇のことを深く知ってもらいたい。そのためにいつも『よりよいサービス』について考えています」と話す荒井さんの言葉には「横浜市民がいつでもどこでも演劇活動を行い、演劇を楽しむことができるような社会をつくりたい」というかつての横浜演劇研究所の理念が息づいているように思いました。

「使う人がいて初めて、資料に価値が生まれる」

「古く貴重な資料を広く閲覧、貸出するのは不安なことではあるが、リスクを冒しても市民の方に使って頂いた方が利益になると思う」と荒井さんが言う通り、資料のほとんどが貸出可能。私たちは、ボランティアの方たちの尽力によって、非常に貴重な資料に触れることができます。

[貴重な資料のひとつ]横浜で活動している劇団・葡萄座の貴重な資料。ファイリングされ保管されているため簡単に閲覧することができる。

荒井さんは「資料を保護して保管しておくだけでは意味がなく、その資料を使う人がいて初めて資料室としての意味があります。そのために自分たちの活動や施設をもっと多くの人に知ってもらい、より市民に活用してもらいたいですね」と話していました。

▽演劇資料室

横浜市西区紅葉ケ丘9-1
開室時間 火曜日から日曜日 9:00〜17:00
休室日 月曜日、年末年始(12/28〜1/4)

【取材後記】

私が今回演劇資料室を取材したのは、幼い頃に地域で活動している劇団の公演を観劇した時、こんなに輝いている世界があるのだと感じ演劇に興味を持つようになったからです。私自身、演劇の経験はありませんが、将来は地域の演劇の普及活動をしたいと考えています。

【記事執筆・上鹿渡 大希

横浜市立大学2年生。北海道出身。現在は国際文化コースに所属し、文学・演劇文化を専門に勉強している。趣味は映画・舞台鑑賞、読書で、特技は暗記すること。将来の夢は国際的な視点を持ちながらも地元北海道の文化・芸術に寄与すること。在学中に海外旅行や文化の実践の場に赴くなどして、自らの経験値を増やしたいと考えている。

 

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