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イタリアのアーティストとともに横浜市北部の民話をアニメ化  アーモンド コミュニティ ネットワークが9月30日に横浜市歴博で上映会

影絵制作を始動する都筑区出身のアーティスト牧田あゆみさん=右端

「聞くこと=傾聴」を通して、孤立することのない共生社会と平和なコミュニティづくりを目指し、多様な活動を展開しているNPO法人「アーモンド コミュニティ ネットワーク」(横浜市都筑区北山田1、水谷裕子理事長 )は9月30日、横浜市歴史博物館(都筑区中川中央1)で、新作オリジナルアニメーション上映会とアーティストブック制作ワークショップを開催します。

アートプロジェクトを支える大学生アニメーター・Aさん(都筑区)

12月上旬まで続く「凸凹コミュニティアート・プロジェクト2017」 (横浜市地域文化サポート事業・ヨコハマアートサイト2017助成事業、ヨコハマトリエンナーレ応援プログラム)の一環です。当日上映されるアニメーション「雪の約束~THE PROMISE OF SNOW」は、横浜市北部の民話をモチーフに、イタリアのアーティストユニットが制作した原画を都筑区在住の大学生アニメーター・Aさんが動画化しました。「繊細な感性」(水谷さん)ゆえ、学校になじめなかった10代に、同ネットワークと関わりながら「好きなこと」を探すチャレンジをしていたAさんは、プロジェクト唯一のアニメーション技術者として今回の企画を支えています。

「雪の約束」は、都筑区出身で現在イタリアに住むアーティストの牧田あゆみさん(トップ写真右端)と同国出身のバルバラ・ラーキさんのユニット「GRIMM TWINS」(グリム・ツインズ)が、横浜市北部に伝わる民話をもとに制作したオリジナルストーリーです。約200本のたいまつを掲げ、まちの人々の災いを追い払う同区南山田地域の夏の行事「虫送り」(横浜市指定無形民俗文化財)、キツネ「葛の葉」の伝説などをモチーフにしています。

星野さんがアニメーターを務めたオリジナルアニメーション「雪の約束」の一場面

Aさんがアニメーターを務めたオリジナルアニメーション「雪の約束」の一場面

 水谷さんは「情報技術の発達によって、瞬時にグローバル文化にさらされる子どもたちに、民話の存在、そのストーリーが生まれる風土・歴史を知ることを通して、地域のアイデンティティについて考えるきっかけにしてほしかった」と、今回、「民話」をテーマに据えた意図を語っています。

 制作は、グリム・ツインズ側がイタリアで原画を描き、Aさんが日本でアニメーション化する流れで進められました。Aさんとグリム・ツインズとのやりとりは、インターネットを通して行われました。約7時間の時差があるため、Aさんの作業は深夜に及ぶこともしばしばだったそうです。

「アニメーションとして納得のいく動きにするために、原画が足りない場合があります。そうした時に、こちらから必要な絵を依頼し、よりよい作品に仕上げていくことが自分の役割です」とAさんは学生ながら、納得のいく作品づくりを目指して熱心に制作に取り組みました。

Aさんがアーモンド コミュニティ ネットワークの水谷さんと知り合ったのは10代始めでした。水谷さんから勉強を教わるほかに、ギターやピアノなど音楽の手ほどきを受けたり、好きだった絵画の勉強を深めるきっかけを得たり「やりたいと思ったことの幅を広げる機会が得られたように思います」と振り返ります。

「アニメーションをやっていこう」と決めたのは、15歳の誕生日。「1つのことを一生懸命やって、自信を持ちたいと思った」ことがきっかけだそうです。その後、Aさんはデッサンや模写を見よう見まねで始めました。見かねた水谷さんが人を介して、Aさんを牧田あゆみさんにつないだことが、このプロジェクトの原点となりました。

一方、水谷さんは、絵や音楽など表現活動に熱心に取り組むAさんと出会ったことで「生きづらさを抱えている少年少女たちが、自分を生き生きと表現できる芸術文化活動を始めよう」と思い立ったそうです。「最初は『1人のため』と思って凸凹コミュニティアート・プロジェクトをスタートしましたが、年数を経るごとに多くの子どもたちにとって価値があることがわかってきました」と活動の深まり、広がりについて話しています。

アーティストブックを手にするNPO法人アーモンド コミュニティ ネットワーク理事長の水谷裕子さん(右)。左は、10月28日に緑区で行う講演会「横浜の北部の民話に聴く〜『民』と『族』の間に挟まれて」で講師を務める夫のロバート・エスキルドセン国際基督教大学上級准教授。

アーティストブックを手にするNPO法人アーモンド コミュニティ ネットワーク理事長の水谷裕子さん(右)。左は、10月28日に緑区で行う講演会「横浜の北部の民話に聴く〜『民』と『族』の間に挟まれて」で講師を務める夫のロバート・エスキルドセン国際基督教大学上級准教授。

そして「A君がやりたいことを見つけ、現在、アニメーションを作るアーティストの卵として活動する姿は、今アーモンドに来ている10代の子どもたちにとっても、刺激になっています」と、成長ぶりに目を細めています。

Aさんの目標は「演出家・監督の意図を聞き取り、表現できる技術を持ったアニメーターになること」だそうです。今回の作品づくりも自分の技術を磨く「修業の機会」として挑戦しています。Aさんに「今、プロジェクトに参加している子どもたちにメッセージを贈るとしたら、どんな言葉になりますか?」と聞いてみました。Aさんはちょっと照れくさそうに言葉を探しながら「好きなことを見つけて、やってみてください」とエールを贈っています。

30日のアニメーション上映会(入場料500円)は1回目が12:30~13:30、2回目が15:30~16:30から。上映会の間に、グリム・ツインズの牧田あゆみさんを講師にアーティストブック制作ワークショップ(参加・材料費1500円)が行われます。上映会・ワークショップともに来場者には、作品DVD付き+オリジナルの横浜北部の民話地図(カラー)の入った冊子が配布されます。

「雪の約束」の上映・ワークショップ・アーティスト交流会は、今後10月7日(都筑区・アーモンドホープセンター=横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅徒歩1分)、10月28日(緑区・なごみ邸=JR中山駅南口徒歩6分)でも行われます。そのほかのイベントも含めた詳細・問い合わせはアーモンド コミュニティ ネットワークのフェイスブックページまたはEmailで。

▽NPO法人アーモンド コミュニティ ネットワークフェイスブックページ

https://www.facebook.com/NPOAlmondCommunityNetwork/
▽メール

almondcommunitynetwork@gmail.com

▽電話  

045(594)7566

ライター紹介

LOCAL GOOD YOKOHAMAは、まちでコトをつくりたい、人とつながりたい、課題を解決したいと考えている市民のみなさんのICTプラットフォームコミュニティ。みんなが情報やコミュニケーションでつながり、人が集まることで何かがはじまる場をつくり、コミュニティや活動がこれからも続くキッカケをデザインします。まちの課題や問いに対して「自分ごと」として新たな一歩を踏み出し、まちの未来をより良くするアクションを 「LOCAL GOOD」と名づけました。 さまざまな地域課題に向き合う「ローカルグッドプレイヤー」とともに、共に考え、語り、取材をすることは、新たな視点や経験を得る貴重な体験です。取組を知り、現場でつながることは、おたがいの働く、学ぶ、暮らすを変えてゆくためのアイデアやアクションを生むためのイノベーションのヒントになります。地域のプレイヤーが悩み、チャレンジする現場に足を運び、声に耳を傾け、みなさんの得意や関心に併せた役割を見つけてください。自らを知る、変えるチャンスを提供します。誰もが参加して応援できるローカルグッドサポーターが、はじまっています。 https://yokohama.localgood.jp/about/ LOCAL GOOD YOKOHAMA 編集部へのお問い合わせやご意見、取材希望や情報提供はこちらにお願いいたします。 localgood@yokohamalab.jp